「妹がいたらこんな感じかなって、よく思うんだ」
「わたしも! グレンといると、お兄ちゃんってこんな感じかなぁって思うよ」

優しい笑みを浮かべながら、グレンがわたしの頭をくしゃりと撫でる。
それがとっても心地よくて、へらへらと締まりのない笑い方をしていたら、突然グイッと腕を引っ張られ体が後ろに傾いた。
倒れる、と思った瞬間、逞しい腕にしっかり抱きとめられ、硬い胸板に頭がぶつかる。
誰の仕業かは、顔を見るまでもなく分かった。
文句を言おうと思い口を開きかけるも、彼はわたしの腕を掴んだまま、ズンズンとどこかへ歩いていく。
頭を撫でていた手の形のまま驚いて固まっているグレンを置いて、わたしは引き摺られるようにその場をあとにした。

「ちょ、なに? なんなの?」

人のいないところまで来て、やっと腕を解放される。
わけが分からず混乱していると、腕を引っ張った張本人、ダリルは不機嫌そうにわたしを一瞥しボソッと呟いた。

「…あんま他のやつに触らせんな」
「なに、嫉妬してるの?」
「うるせぇ」

そっぽを向いてそう言う彼の、長い髪の隙間から見える頬が、少しだけ赤く染まっているような気がする。

「グレンにはマギーがいるし、わたしもそんなつもり全然ないよ」
「それでもだ」

依然として仏頂面のダリル。
いつも冷静で頼もしいのに、こういうことになると突然子どもっぽくなる彼が、かわいくて好きだ。
そんなこと言ったら怒られそうだから言わないけど。
仕方ないなぁと思いながら彼に抱きつき胸にすり寄ると、ぎゅっと力強く抱きしめられる。

「お前のこと疑ってるわけじゃねぇ。けど、嫌なもんは嫌なんだよ」


prev next