あるオフの日、突然スタークが自宅に押しかけてきた。
それも、小さな可愛らしい同伴者つきで。
「スターク、その子は一体…」
「ナマエと私の隠し子だ」
「寝言は寝て言え」
強気に言い返しはしたものの、スタークの隣に立っている小さな女の子は、確かに僕の恋人であるナマエにそっくりだ。
まさかとは思いつつも若干不安になりかけたその時、
「とにー、だまってて」
女の子はスタークにそう言うと、小さな手で僕の手を取り、ぎゅっと握った。
「すてぃーぶ、あたし。わかる?」
「…………ナマエ、なのか…?」
僕の言葉に、不安そうだった少女、もといナマエはパッと表情を明るくした。
スタークとナマエに聞かされた話は、にわかには信じがたい内容だった。
数時間前、スタークの部下であるナマエは新しく開発中のアーマー用の武器をテストしようとしていた。
しかし誤作動で装置が爆発しナマエは吹き飛ばされてしまい、何事かと急いで駆け付けたスタークがそこで目にしたのは、なぜか5歳ほどの見た目になってしまったナマエの姿だったのだ。
爆発の際に発された電磁波等の影響か、詳しいことはまだ分からないそうだが、とにかくナマエは外見が20歳ほど若返ってしまっている。
現在バナー博士とスタークが全力を尽くして元に戻す方法を探しているそうだが、さすがに恋人である僕には隠しておけないだろうと、こうして家に連れてきたということだったのだ。
「なにか分かったらすぐ連絡するからな」
そう言って早足で去っていくスタークを見送り、僕とナマエだけが部屋に残された。
ふと時計を見ると、針は昼の12時過ぎを指している。
「えっと…とりあえず、食事にするかい?」
「…うん」
冷蔵庫にあった具材でスパゲッティを作り、ナマエと向かい合って食べ始めたものの、僕の食べる手はなかなか進んでいない。
なぜなら幼いナマエがちまちまと食べる姿が可愛くて、ついつい目を奪われてしまうからだ。
普段のナマエは“かわいい”よりも“綺麗”という言葉が似合う大人の女性だから、余計にそう感じるのだろう。
小さな手で大きなフォークを持って、服や顔を汚さないようにと懸命にパスタを口に運ぶその姿を、思わずじっと眺める。
「…すてぃーぶ、たべないの?」
「え、あ、あぁ……」
首を傾げ、不思議そうに僕を見上げるナマエ。
その口の端には、スパゲッティのソースがついている。
「ナマエ、ついてるよ」
そう言いながら指でソースをとってあげると、ナマエは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに口の周りをぬぐった。
そんな彼女の様子に、僕の胸は恋愛的な感情とは違う気持ちに支配された。
これは、庇護欲というやつだろうか。
しっかり者で頭の回転も速く器量の良いナマエに対して、こんな感情を抱く日が来るとは思いもしなかった。
「ねぇ……もしずっとこのままだったら、どうしよう…」
食後、ソファに腰かける僕の隣に座ったナマエが、床に届かない足をプラプラとさせながら、不安そうに呟いた。
大きなクッション(僕にとっては普通のサイズだけれど)を抱え、小さくて可愛らしい唇を突き出している。
不安で一杯のナマエには申し訳ないけれど……正直、かわいすぎる。
なんだかたまらなくなって、ナマエの両脇に手を差し込み、その小さな体をひょいと持ち上げた。
「す、すてぃーぶ?! おろしてっ!」
暴れるナマエを無視してそのまま膝の上に座らせ、ふにふにと柔らかい頬にキスをし、頭をぽんぽんと撫でる。
「ナマエ、大丈夫だよ。スタークとバナー博士なら、元に戻る方法をきっと見つけてくれる。二人を信じよう」
ゆっくりと背中をさすると、ナマエの手が僕の背中に回され、シャツをきゅっと握った。
小さな彼女の体を優しく抱きしめ、柔らかな髪に唇を寄せる。
ふと目線を上げると目の前には、電源の付いていないテレビの画面に映る、僕とナマエの姿。
がっしりと鍛えられた大人の男が、小さな女の子を抱きしめ髪にキスを落としているこの光景は、どう見ても…
「アウトだな……」
「え、なに?」
「い、いや…なんでもないよ」
翌日、スタークとバナー博士の徹夜の甲斐もあって、ナマエは無事に元に戻ることができた。
難しいことはよく分からないが(英語で喋ってくれと言っても無駄だった)、健康に害も無いそうなので、まぁ良しとしよう。
ただ、「今後はナマエに危険な作業はさせるな」と念押ししながらも、もう少しだけ幼いナマエを堪能したかったと思ってしまったことは、彼女やスタークには秘密にしておこう。
My Little Lover
******************
さくら様、リクエストありがとうございます!遅くなってしまって申し訳ありません! しかも大変萌える設定のリクエストを頂いたのに、うまく表現できずで…!ほんと駄文で申し訳ないです! ですが、少しでも楽しんで頂けていたらと思います! 改めまして、この度はありがとうございました!
prev next
|