「『キャプテンが負傷した』なんて聞いたから、また大怪我したのかと思って焦っちゃった」

「心配させてすまない……」

「んーん、大したことなくて良かった」


そう言って微笑みながら、僕の腕に包帯を巻くナマエ。

その優しい手つきに、思わず口元が弛んだ。


「どうしたの? なんか嬉しそう」


はい終わり、としっかり留めた包帯の上に軽く手を乗せ、ナマエは僕の顔を覗きこんだ。


彼女の優しい瞳は、初めて会ったときから変わらない。

僕の大好きな眼差しだ。




記憶を失ったバッキーと戦って瀕死の重症を負った僕は、入院を余儀なくされた。

その間に僕を担当した看護師のうちの一人がナマエだったのだ。

やけに改まったり好奇の目で見てくる他の看護師たちと違って、唯一ナマエだけが“アメリカの英雄”としてではなく“一人の患者”として僕を見てくれた。

退屈な入院生活のなかで、自分が次第にナマエと話すのを楽しみにしていることに気がつくまでそう時間はかからず、退院の際に思いきって彼女に想いを伝えると、自分も同じ気持ちだと告げられ、晴れて僕たちは恋人同士となった。


とは言ってもお互い忙しいこともあり、まだろくにデートもできていない。


「ねぇ、スティーブ」

「なに?」


不意に、真剣な表情を見せるナマエ。

包帯を巻かれた腕に乗っていた彼女の右手は、するする、と移動し僕の左手に重ねられる。


「スティーブが戦いに行くたび、すごく心配してるの。本当に」


こんな風に、ナマエが不安を見せるのは初めてのことだった。


「ナマエ、大丈夫だよ。僕は普通の人よりずっとタフだし、回復も早い。滅多に重症になんてならない。知ってるだろう?」

「でも…不死身なわけじゃないんだし……」


そう言って、ナマエは俯いてしまった。

なんとかして、彼女に安心してほしい。

でも、どうしたらいいか分からない。

なにせ、これまで女性とこうして接することなんて無かったから。


これが正解なのか分からないけど、恐る恐る右手をナマエの頭に乗せ、ゆっくりと彼女の滑らかな髪の上を滑らせる。

ぎこちないながらも、そうしてしばらく頭を撫でていると、ナマエがゆっくりと顔を上げ、僕を見上げた。


お互いに何も喋らない。いや、喋れなかった。

頭を撫でていた手を頬に滑らせ、ナマエの瞳に吸い寄せられるように、顔を近づける。

彼女に近づくごとに煩くなっていく、自分の心音。

鼻と鼻が触れるような距離までくると、目の前の二つの瞼がゆっくりと閉じられた。

緊張でおかしくなりそうになりながらも、ありったけの思いを込めて、ふっくらとしたナマエの唇に口づける。

ナマエの不安が少しでも晴れますように、と。



唇が離れると、閉じていたナマエの瞼がゆっくり開かれた。

そこにあるのは、変わらない彼女の瞳。

僕の愛する、ナマエの眼差し。



その眼差しで

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キーボ様、リクエストありがとうございます!お待たせしてすみません!
ご希望の内容に沿えているでしょうか?
中途半端な感じになってしまって申し訳ない限りです…!
お祝いメッセージもありがとうございました!
今後も頑張っていきます!


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