「なぜここにいるんだ、スターク」
「おいおい、ここは本来私のビルだぞ? ついにボケちまったのかジイサンは」
わたしの目の前で睨み合う二人の間にバチバチと散る火花が見える、気がする。
どうしてこの二人は、すぐ喧嘩になっちゃうんだろう?
スターク・インダストリーズの技術スタッフとして入社したわたしは、幸運なことにトニーに能力を買われ、一年ほど前から彼の直属の部下となった。
彼はアベンジャーズのメンバー。となると、彼の部下である私も、他のアベンジャーズのメンバーと面識ができるわけで。
そうしてキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースとわたしは出会い、瞬く間に意気投合。
いつしか彼に思いを寄せるようになっていた。
「きみは今日は終日外出だとナマエが言っていたぞ。連絡もなしに予定を変えたらナマエたちが困るだろう」
そう、今日はトニーが留守だというから、前々からわたしのラボを見てみたいと言っていたスティーブを、勇気を出して誘ったというのに。
二人きりの時間はものの10分ほどで、突然の邪魔が入って今に至る、という訳である。
「おいジイサン、言っとくがナマエは私の部下だ。気まぐれな予定変更なんか慣れっこだし、アンタがわざわざ気にするようなことじゃない」
そうだろ?と、私の腰をぐいっと抱くトニー。
彼のスキンシップ過多は今に始まったことじゃないし、この一年で上手なあしらい方もしっかり覚えた。
ため息をつき、トニーから離れようとしたその時、
「やめろスターク。ナマエが嫌がってる」
わたしが動くよりも早く、スティーブがわたしとトニーを無理やり引き剥がし、わたしを後ろに隠した。
彼の表情は見えないけど、何となく雰囲気で、怒っているのが伝わってくる。
「ったく、お堅いなジイサンは。愛しのナマエを取られたからって、そんなに怒るなよ」
「なっ…!」
い、愛しの…? それってどういう……。
「きみたち二人、いいかげん付き合ったらどうなんだ? 今どきティーンエイジャーだってこんな恋愛してないぞ」
突然のトニーの発言に、ただポカーンとするわたしとスティーブ。
さっきから、頭の回転がぜんぜん追い付かない。
とにかく、なにか変なことを言われる前に何とかしないと、と思い口を開きかけたが遅かった。
「ナマエもナマエだ。私には冷たく当たるくせに、このジイサンの前じゃすっかり恋する乙女の顔だもんな。パパは悲しいぞ」
「ちょ、あの! 余計なこと言わないでください!!」
ていうかパパじゃないし!と心の中で突っ込みつつ、トニーにわたしの気持ちを知られていたうえ、それをスティーブ本人の前でバラされてしまったという事実に、羞恥心が込み上げてくる。
穴があったら入りたい、とはまさに今の状態だ。
「ま、あとは二人で仲良くやってくれ。私はまた出かけてくるから」
引っ掻き回すだけ引っ掻き回したトニーは、片手をヒラヒラと振りながらラボを出ていく。
それを無言で見送るわたしとスティーブ。
さっきから顔が熱くて、頭もまともに働いてない。
恐る恐る隣の彼を見上げると、口元を手で覆い、耳まで真っ赤に染まったスティーブに、目を逸らされた。
「まったく……見てるこっちが焦れったくなる二人だな」
Shut up!!
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ハルアキ様、リクエストありがとうございます! 書いてるうちに「これリク内容に沿えてないかも…?」と思ってしまったのですが、こんなので大丈夫でしょうか…?! 応援コメントもありがとうございました!! 今後も頑張ります!
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