▼ 10.進む道、刻む道
それまでに、せめて、一目、フォルグネーレに会いたい。
必死の思いで、体を動かし、前へ進む。セイがひまわりを見ていた丘には、もう、ひまわりはなくなっていた。それは、じきに秋が、そして、冬が来るのだとドゥロロに感じさせた。
先に森へ向かった彼は、もしかしたら《彼女》に会えたのだのろうか。
考えながら、ようやく入り口のそばまで来て、森が、やけにざわめいていることに気付く。
(──あれ?)
今まで、口を閉ざしてきた木々たちが、やけに、騒いでいるのを感じる。これまで静かに眠りについていた森が、何か賑わっている。
『いけにえ! いけにえ!』 と、楽しそうな、子どもの声。その無邪気さと裏腹に、背筋に冷たい汗が流れる。
「……人間が──掟を破って、森に、入った?」
あの《歴史》から、普通の人間は森に入ってはならないと言い伝えられてきた。それなのに、なぜ、今、森に人間がいるのだろうか。
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