▼ 9.寄り添うように舞い降りる
足音がして、振り向く。男性が二人立っていた。最初から、ここでなにかしていたらしい。体に木の葉が貼りついており、二人とも、靴や着ている作業ズボンが土で汚れている。片方が眼鏡をかけた細身の男。もう一人は、背が高く、不気味に笑っているが、目深に帽子をかぶっていた。
「……おや、こんなところに、ぼくは、どうしたのかな?」
背が高い男が、覗き込むように、優しくセイに話しかけた。
「──あ、あの、こんにちは……」
人がいるとは思わず、耳をなるべく頭に付けるように意識しながら、後退り、挨拶する。男たちはにやにや笑って、セイを見ていた。片方には見覚えがある。あの祭のとき、こちらと目があった男だ。
「うん、こんにちは。きみは、迷子かい? おうちは? あのカフェ、だったかな」
気分が悪い。この男が、母となにか争っていたのも思い出した。距離を詰めてくるので、また後退りながら、曖昧に笑って聞く。
「……あなたたちこそ、ここで、なにを」
眼鏡の男が、薄く笑って答えた。
「ああ、僕らは、この木や──この森について、お勉強してるんだよ?」
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