▼ 9.寄り添うように舞い降りる
「……ここは、立ち入り禁止のはずです」
「きみも、だね?」
「……はい、ですが──」
眼鏡の男の手が伸びた。
「ところで、その耳は、もしや──」
頭に触れられそうになり、思わず飛び退く。それは、人間的なものとは言い難い、素早い動きだった。
「あなたには関係ありません」
「……なるほど」
男はなにかに関心すると、手を引っ込め、セイに近づいてくる。もう一人の、背の高い男が、服の内側に入れていた小さな本を出し、目の前の少年と見比べて頷いた。
「間違いない。これは、かつて存在した獣種の生き残りだ。とうとう見つけた」
まずい。
本能的に、このままでは危ないと悟り、急いで駆け出す。
男たちは、少しも躊躇わず、その背中になにか発砲した。それは、セイが走るスピードに簡単に追い付き、背中の肉を抉る。
何か音がしたと思ったときには、既に背中への激痛が激しく、振り向く余裕さえもはやなかった。
prev /
next