森と君と | ナノ
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 10.進む道、刻む道


「あなたは私じゃない」
「私はあなたじゃない」
「でも、たまに、あなたの気持ちが」
──わかる気がする。

エピローグ

 森と人間との共存関係は、ある日を境に、崩れて行きました。

昔、この辺りに住んでいた人間が、畏れ敬っていた聖域までもを、時の流れとともに人間は、『資源』と見なし始めます。


 そこに住んでいた生き物は、どんどん減らされ、森は日に日に仲間を失い、嘆く日々を続けていました。
 昔は聞こえていたはずの木々たちの声も、時の流れとともに、自分たち以外に興味を失った人間たちには届きません。


このままでは、滅びてしまう。一部の木たちは、考えました。

そして、やがて『人間』の体で、人間の社会に紛れて行くことを思い付きます。年月をかけ、人間の形をした生物が生まれました。

 それでも、根を張らないで生きていける月日は限られます。彼らは、限られた命を使って、様々な人間に頼みに行きました。
この森にはもう入らないでくれ、と、沢山の人にお願いしました。
人間たちは言いました。

『私が入らなくても、他の人が入るよ』

だったら、と木は言いました。
『もしそうなれば、その人は、木になり、実となり、森の養分になるでしょう』

 そいつはいいや、と何人かの人間は言いました。

『ちょうど、女房が憎くてしょうがない』
『あんなワガママ坊主でも、森のお役には立てるのね』

怒った森は、これまでの何倍ものいけにえを欲しがりました。
いけにえ、とは、かつての人々が森に捧げていた、選ばれた生き物のことです。人間の中に生まれてしまった、獣のような人間。
彼らは、食べるものを絶やされ、森から出て、人間に混じって暮らすうちにほとんどヒトと変わりなくなっていったとされる種族で、──もう、その地域には、ほとんど残って居ませんでした。

かつての伐採や、大火事を鎮めるために、これまでも、何人もの獣種たちが、いけにえになりました。
──だから、もう、居なかった。


森は、とうとう見境を無くしました。

 まだ、自分たちの声が聞こえる、幼い子どもをたくさん、自分たちのもとへと招きました。


やがて、人間たちは言います。

『あれは呪いの森だ』

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