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A「落ち着いたか、Bくん」
B「まあな。でもそこから近づくなよ」
A「そんなに遠くに離れなくても……ってこんな会話前にもしたな」
B「そうだな。それだけAくんが変なことばっかりするってことだな」
A「変なことなんかしてないよ。僕なりにBくんへの愛を表現しているだけだ」
B「それを変だと……というか今さらだけど愛って」
A「そうそう、そうだった。そろそろ本題に戻ってもいいかな」
B「い、うん、いいけど……」
A「Bくんに僕の愛を伝えるためにこんなものを用意してみたんだ。ぜひ見てくれ」
B「何それ、スケッチブック?」
A「そう。題して『Bくんのここが可愛い』。じゃあまず1枚目から」
B「いやいや待て待て、おかしいだろ。何で急に芸人のネタ見せみたいになってんだよ。しかもそれ本来は『こんなBくんは嫌だ』とかやるやつだろ」
A「何を言ってるんだBくん。Bくんに嫌なところなんてないよ」
B「いやそういうことじゃなくて」
A「それにどんなBくんだって僕は愛せるよ。例えばそうだな、Bくんの語尾が*だったり酔っ払うと僕にアナルを舐めてもらいたがったりしたとしても」
B「それAくんに都合いいやつじゃねーか。つうかそうじゃなくて、……いや、もう何でもいいや。緊張した俺がバカだった」
A「おや、緊張してたのかいBくん」
B「そりゃするだろ。Aくんが俺のこと、その……す、好きとか、思ってもみなかったわけだし……」
A「……」
B「……なんか言えよ」
A「……いや、僕の気持ちがそれほどまでに伝わっていなかったことを悔やむべきなのか、それとも好きという言葉一つで恥ずかしがってどもってしまうBくん可愛いさすが僕の天使と悶えるべきなのか分からなくて」
B「……」
A「Bくんこそ何か言ってくれ」
B「うるせーよ。可愛くないし、つうかいちいち茶化すなっつの。マジメに喋んねーならもう帰るからな」
A「待ってくれ。分かった、とりあえずもう一回座ってくれないか。ちゃんと真面目に口説くから帰らないでくれ」
B「え、いや口説くって……」
A「こんな物に頼るのはやめて真剣にBくんに告白する」
B「あっ、おいそんな別に、何か知らんけどわざわざ書いたんだろ、何も投げ捨てなくても」
A「いいんだBくん。あんな下手くそな絵は放っておいて僕を見てくれ」
B「あ、うん……まあAくんがいいならいいけど……」
A「Bくん」
B「な、なんだよ」
A「好きだBくん。愛してる。僕の恋人になって一生僕と添い遂げてもらえないだろうか」
B「え、い、一生って」
A「僕はBくんを途中で手放す気はないよ。そりゃまあBくんの心が離れてしまったら仕方ないけど、でもそうなったとしても僕はこの先一生Bくんのことを好きでい続けると思う」
B「……そんな言い切っちゃっていいのかよ。今はそう思ってたとしてもこの先俺なんかよりいい人が現れるかもしんないだろ」
A「現れないよ。それにもし仮に100人中99人がBくんより誰か他の人がいいと思ったとしても僕にとってはBくんが一番だよ」
B「何を根拠にそんな……」
A「さあ、何だろうな。でも、うーん、何て言えばいいか分からないけど僕はBくんに出会えたのは運命じゃないかと思ってるんだ」
B「う、運命って」
A「言い方はちょっと古いけどビビッと来たとでも言えばいいのかな。一目見た時に分かったんだ、ああこの人だなって。昼にも言った通り顔というか外見とか、あと雰囲気とか? そういうのも勿論ひっくるめてなんだけどでもそれだけじゃなくて、いやもう理屈とか抜きにして僕にはこの人しかいないって思ったんだ」
B「……」
A「つまり結局は一目惚れなんだけど、でもこの一年ちょっとの間僕のBくんへの気持ちは毎日どんどん大きくなっていった。最初の頃は教室で時々話すだけだったけど僕が何か言ったことに対してBくんが笑ってくれるとその度にすごく嬉しかったし、逆に僕が変なことを言った時に呆れられたり冷たい目をされたり叱られたりするのも嬉しかった。とにかくもうBくんが僕の言葉に反応してくれたらそれだけで満足できるくらいには僕はBくんのことが好きで、毎日がすごく楽しかったし幸せだったんだ」
B「……」
A「僕のくだらない話に文句言いながらも付き合ってくれる優しいところも好きだったし、それから部屋に遊びに行くようになってからも別に何をしていたわけでもないけどただ教室以外で一緒に過ごせるだけでも楽しかった。寝転んでテレビを見ながらぼーっとしてるのも漫画を読んで笑ってるのも宿題をしながら眠そうにあくびをしてるのも全部可愛かったし、僕がいてもくつろいでくれるのが気を許してくれているようで嬉しかった」
B「……」
A「それから可愛いと言えば下ネタ耐性がないBくんが僕の妄想でいちいち真っ赤になっちゃうのも可愛かったし、前に僕がBくんの寝起きにうっかり襲いかけちゃった時に気持ち良さそうに甘い声で喘いでくれたのも」
B「あああああ、あれは忘れろって言ったろ!」
A「うん、まあ確かにその通りだし僕も忘れるように努力するとは言ったが、でもやっぱり無理だよBくん」
B「何でだよ! 忘れろってば!」
A「だって僕はBくんのことが好きで、好きって言うのはそういうことも含めた好きなんだよ。だからBくんをまた抱きしめたいしキスだってしたいし触ったりもしたいし、それでBくんにも気持ち良くなってほしいし、訳わかんないくらい気持ちよくなって泣きながら僕にすがりついちゃうBくんの姿も見たい」
B「な、泣かねーしすがらねーよ」
A「正直に言えば背中だけじゃなくて全身くまなく舐め回したい。もちろんアナルも含めて」
B「そ、」
A「でももっと正直に言えば、そんなことできなくてもいいんだ。確かに僕はこの一年近くBくんのアナルへの愛と欲望を語り続けたしあれはあれで全部本心なんだが、でももしBくんにアナルがなかったとしても僕はBくんのことが好きだというのも本心なんだ。それだけじゃない、たとえBくんが僕に抱きしめたりキスしたり触ったりさせてくれなかったとしても、Bくんが隣にいてくれるだけで僕は幸せなんだ。そのくらいBくんのことが好きだ」
B「……」
A「でも好きだから、やっぱりBくんにも僕のことを見てほしいし、Bくんが時々誰かに告白される度に不安でたまらなくなる。もしBくんが誰かと付き合いだしたらどうしようとか、それでなくても誰か好きな人ができたらどうしようとか、一旦考え出すと怖くなって夜も眠れなくなることもあるし、反対にもし僕のことを好きになってくれて恋人になってくれたらどんなに幸せだろうって想像して逆に眠れなくなることもあるんだ。だから今までも十分幸せだったけど欲を言えばやっぱり今までみたいにただの友達としてだけじゃなくて僕のことを好きになってほしいし、キスもしたいし抱きしめたり触ったりもしたいし、恋人としてずっと一緒にいてくれたらいいのにと思って、それでちゃんと告白しようと思ったんだけど、僕のこの複雑な思いが分かってもらえるだろうか」
B「分かんないことは……ねーけど……」
A「そうか、じゃあ僕のBくんへの愛は伝わったのかな」
B「……」
A「……」
B「……」
A「Bくん」
B「……何だよ」
A「そろそろ何か言ってくれないかな」
B「何かって何だよ……」
A「返事というか、Bくんが僕のことをどう思ってるかが聞きたいんだが」
B「……」
A「Bくん」
B「……」
A「そんな可愛い顔しないでくれ、Bくん」
B「可愛くねーよ……Bくんやっぱり頭だけじゃなくて目もおかしいのか」
A「いや、おかしくないよ。そんな風に顔を真っ赤にして目もうるうるさせながら見つめられるとうっかり自惚れてしまいそうなんだが」
B「……」
A「否定しないってことはもしかして期待してもいいのかな」
B「……Aくんこそそんな顔で見んなよばか」
A「ああ、ごめん。もしかして両想いなのかなと思ったらつい顔が緩んじゃって」
B「……そーかよ」
A「ねえ、Bくん。Bくんの口からはっきり聞かせてくれないか」
B「う……」
A「頼むよBくん」
B「いや……うん……分かってんだろ、察しろよ」
A「Bくん……!」
B「うわ、ちょっ、何だよ急に飛びついてくんなよ」
A「Bくん、好きだよ。大好き。愛してる」
B「う、うん……」
A「改めて言うけど、僕の恋人になってくれないか。Bくんのためなら何でもする。一生幸せにするから」
B「……ん」
A「Bくん今頷いた? 頷いてくれたよな? あー僕は今世界一の幸せものだ! この幸せを世界中の人に伝えたい!」
B「う、うるせーよ、耳元で叫ぶな。つか苦しいからちょっと離れて」
A「いや無理だごめん! というかなぜBくんはそんなに冷静なんだ。僕はとても落ち着いてなんかいられないし、何ならもう嬉しすぎてうさぎ跳びで校内一周したいくらいのテンションなのに!」
B「分かった、分かったからちょっと落ち着け。とりあえず手の力を緩めろ、マジで苦しいから」
A「いやもう本当にちょっと無理というか手が震えて……」
B「え、Aくん……おい、泣くなよ」
A「うん……ごめん……」
B「しょうがねーな、いいよしばらくこのままで」
A「Bくん……ありがとう、やっぱりBくんは優しいな……」
B「はいはい」
A「好きだよBくん……」
B「……ん、俺も」
A「僕と付き合ってくれる?」
B「……うん」
A「Bくん……」
B「あーもう、泣くなってば」


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