▼ 14

琢磨の手のひらが、ゆっくり内腿を滑り上がってきた。
躊躇いがちにそこを撫でた手にわずかに力が入り、僕の足は両側に割り開かれる。
下着を脱がされて隠すもののないそこに熱を持った視線が注がれるのを感じて、思わず唇を噛んだ。

どうしよう、なんかすごく恥ずかしい。
人に見られるのなんて別に初めてでもないのに、琢磨に見られてるというだけでどんどん体温が上がっていく気がする。

気がつけば直接触られてもいないのにいつの間にか立ち上がっていたそこから、透明な体液がとろとろと溢れ出していた。
こくんと唾を飲んだ琢磨が、やっぱり火傷しそうな熱い視線で僕を見上げる。

「触っていい?」

吐息が掠めるだけで、びっくりするくらい腰が跳ねた。
早くちゃんとした刺激が欲しい。
堪らなくなって頷くと、裏筋に柔らかいものが触れる。

だけど両足を割り開く両手はそのままで、まさかと思って見下ろすと琢磨はうっとりと目を閉じて僕のそれに触れるだけの口づけを繰り返していた。
たらりと垂れた先走りを少しだけ差し出された赤い舌が下から舐め上げて、それを追うように親指の腹でなぞり上げられる。
もうなんていうか視覚的にも触覚的にも……

「ふ、……っ、琢磨、ごめ、出る……」
「え?」
「ん、――っ!」

目を丸くした琢磨の頬を、僕が放った白い液体がべとりと濡らす。
しまったどうしようと頭では思うけれど、余韻で体が動かない。
荒くなった呼吸を手で抑えて背中をぐったりシーツに預けていると、濡れた頬を手の甲で拭った琢磨が体をずり上げて僕を見下ろした。

「由良」
「ごめん……」
「かわいい、由良。なんで謝るの?」
「だって顔にかけちゃったし……」
「いいのに、そんなの気にしなくたって」
「っ、ていうか僕早すぎない? どうしよう、何で?」

恥ずかしくなって両手で顔を隠せば、頭上で琢磨が嬉しそうに笑った。
左手をはがされてやんわりとシーツに抑えつけられ、琢磨の指先がゆっくり二の腕までなぞって降りてくる。

「あ……」

想像していた以上に琢磨の手は気持ちいい。
勝手に甘ったるい声が出て、目を閉じれば唇に柔らかいものが触れる。

ずっと我慢してたなんて言ってたくせに琢磨は全然ガツガツしてなくて、壊れ物を扱うかのようにゆったり静かに僕の体に触れる。
くすぐったいくらいの刺激でじわじわと熱を煽るように、焦らすように。

そのまま脇腹を撫で下ろした指先が途中からお腹へ、おへその周りを焦れったいくらいの速度でくるりと撫でてから下生えまで。
それから、その頃には再び立ち上がっていた中心を避けて太腿を迂回し、ゆっくり会陰を降りていく。

「っ、……あ、んん……」
「大好き、由良……」

耳に直接囁かれる言葉まで甘い刺激になって、内側から溶けてしまいそう。
唇と指先だけでこんなに気持ちいいだなんて初めてで、どうしていいか分からなくなるくらい泣けてくる。

だから体内に入ってきた琢磨の指が十分すぎるくらいに中を広げて出て行く頃には、僕はもうこれ以上ないってくらいに溶けきってしまっていた。
だってもう本当に、探り出された性感帯を器用に刺激される度に堪らないくらいの快感に何度も達してしまって、最後には意識が霞みかけてきたせいでそれ以上出さないように自分で根元を押さえていたくらいだ。

僕がそんな乱れっぷりだったから琢磨も心配になってしまったみたいで、「どうしよう、今日やめとく?」なんて言いだすくらい。
だから、お願いお願い琢磨が欲しいとねだり倒してようやく待ち望んでいた屹立が中に埋め込まれた時には、感極まって泣き出してしまった。

「大丈夫? 痛くない?」
「へーき……動いて、琢磨の全部ちょうだい……」

散々何人もと寝てきて今更痛いわけなんかないのに、まるで初めての子とするかのように大事に扱ってくれる琢磨の優しさが堪らなく嬉しい。
琢磨が好き。本当に好き。
やっと一つになれて、こんなに嬉しいことなんてきっと他にないだなんて思う。

「あ……っ、好き、琢磨、だいすき……!」

半ば叫ぶみたいにそう言うと、琢磨が僕を息が苦しくなるほど抱きしめてくれる。
顔中にキスしながら、夢みたい、だなんて言うから、なんだかすごく琢磨が可愛く見えた。
でも僕も同じ気持ちで、琢磨と同じ気持ちだということが余計に嬉しい。

「……っ、あ、ぁ……!」

律動に合わせて意思とは関係なしにもれる声が、粘ついた水音と共に静かな部屋に響く。
体内を動く熱いものが、上半身を辿る優しい指先が、僕の全身を内から外から追い上げる。

限界まで張り詰めていた僕のものが密着した琢磨の肌に擦られて、とろとろと流れる液体が滑り気を増していく。
一突き一突きが信じられないくらい甘くて、怖いくらいに溺れていくのが自分でも分かる。
全身がどっぷり浸かったような心地よさ。
何にって、何だろう。
琢磨がくれる愛に?

ぼやける視界で見上げれば、琢磨はすごく色っぽい表情をしていた。
きゅっと目を閉じてかすかに眉を寄せて、耐えるように噛まれて赤く色づいた唇も全部、本当にすごく色っぽい。
気持ちいい? と囁けば、うっすら目を開けて熱い吐息まじりに「うん、すごく」と頷く。

「っ、由良、ごめん、もうイきそう……」
「僕も……ね、一緒に……」
「ん…」

だけどキスをしながら琢磨の腰に足を絡めれば、琢磨が困ったように僕を見る。

「由良、足だめ。外に出すから」
「何で……やだ、奥にちょうだい。琢磨の全部、欲しい…」
「…っ、由良…」

煽んないでよ、という少し苦しげな囁きと同時に、琢磨の腕が僕の腰を強く抱き寄せた。
途端に律動が早まる。
今までのゆったりした余裕が嘘みたいに、激しい突き上げ。
中のいい所を押しつぶすような動きに、頭の中が真っ白になる。

「ひ、ぁ……っ! 琢磨、あ、まっ……イっちゃ、ぁ、あ!」
「ん……」

力の限りしがみついて、抱きしめてもらってないとどっか飛んでいってしまいそうな衝撃。
泣きじゃくりながら琢磨の頭を抱きかかえれば、鎖骨の辺りにちくんと痛みが走って、強く吸い上げられる。

「好き、大好き由良……全部、俺の……」
「っ、あ、―――!」

掠れた声に体だけじゃなくて心まで隙間なく満たされて、体が浮き上がるような絶頂に放った声も合わされた唇に奪われて、僕の全部が琢磨のものになる。
そのまま奥に放たれた琢磨の熱い体液に続けてもう一度軽く達して、このまま溶けあってしまいそうな幸福感。

白んでいく意識の片隅で僕の髪をゆっくり撫でてくれる琢磨の手は、やっぱりすごく優しかった。

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