▼ 脱☆バージン

たかが10分、されど10分。
既に暴発寸前だったものを無理矢理せき止められて、ちょっとおさまってはまたイく寸前まで高められてだけどまた焦らされての繰り返し。

散々我慢させられた俺は、きっちり辰巳より早いタイムでイかされる頃には既にみっともないほど泣きじゃくっていた。

「やっぱ可愛い、貴史」なんて色っぽい声で囁く辰巳の声も、今まで味わったことのないくらい壮絶なまでの射精の快感のせいでどっか遠くで響く。肩で息をしていた俺は、服を脱がされ力の抜けた足を肩の上に担ぎ上げられて、余韻で呆然としたまま辰巳を見上げた。そんな疲れ果てた俺を見下ろし、辰巳は口元を引き上げる。ら

「俺の勝ち。後ろ触っていい?」
「や…やだ、怖い……」
「大丈夫。初めてだろ? 優しくするから」

ほんとかよ、って思ったけど俺の体はぐずぐずに力が抜けてて、そこからさらに深いキスされたら抵抗する力も根こそぎ抜けていった。俺が放ったばっかりの精液を纏った辰巳の指が、未だかつて誰にも触られたことなんかない穴の周りをゆっくり撫でだして、アイデンティティ崩壊の危機を覚える。
とかなんとかかっこいいこと言ってみたりするけどそれはただの現実逃避、っていうかアイデンティティって何? 使い方あってんの?

「あ…、あ、やっぱやだ…」
「大丈夫だって。力抜いて」
「ふ……っ、う、ぁ!」

大丈夫なら代わっておくれよ、と言う前に、辰巳の指がちょびっと中に入ってきた。同時に乳首を甘噛みされて背筋が勝手に反る。そんなとこ感じたことないのに何で、とますます涙目になった俺を見上げて、辰巳は嬉しそうに目を細めた。

「かわい、やっぱネコの素質あるんじゃないの?」
「そんなんいらな…、っ、あ、ぁっ」

いつの間にか辰巳の手元にあったローションが追加で垂らされて冷たさに呻くと、その滑りを借りてずずっと指が進んできた。痛くはないけど違和感というか、あらぬ所がべちょべちょしてなんとも気持ちが悪い。
あー俺のプランでは今頃俺が辰巳にしてるはずだったのに、一体なぜこんなことに?

「……ひっ、やあぁっ!」
「ここか。気持ちいい?」
「やっ、なにこれ分かんなっ…!」
「何って知ってんだろ、前立腺。貴史のいーとこ」
「っ、んぁ、あ、あ…っ! も、ムリ、辰巳ぃ…!」
「ん? イきそ?」
「ちが、ぁ、だめ…!」

何これマジで何これ、気持ちいーつうか、なんかビリビリ、じゃなくてジンジン? じゃなくてもうよく分かんない、けど頭がおかしくなりそうなくらいの刺激で、そこをぐりぐりされる度に開きっぱなしの俺の口からは上擦った変な声しか出てこない。
自分の喘ぎ声なんか聞いたって面白くもなんともないってば!

「あ、あっ、っ! 辰巳、もうやだ、抜いて……!」
「ん、もう1本指増やすな」
「な、なんで…! ひ、ああぁっ!」

途端に増した圧迫感に、目の前にあった辰巳の肩に力の限りしがみつく。ついでに噛みついて歯を立てれば頭を撫でられて、その手が妙に優しくて涙がぼろぼろ出てきた。

あーもう、どうしよう、俺、なんでこんな気持ちいいの。

「…っ、辰巳、お願い1回イかせて…前もさわって…!」
「んー?」
「ふ、ぅ…っ、おねがい、しんじゃう…たつみぃ…」
「ん、もうちょい我慢な」
「あ、ばかぁ…! 意地悪しないで…!」
「はあ…可愛い、貴史マジでかわいい。な、もう入れていい?」

優しくするんじゃなかったのかばかやろう!
なんてことを言う余裕はなかった。いつの間にやら3本に増えてた指に気持ちいい所をぐりぐり押されつつ中を広げられて、居ても立ってもいられなくなる。
もう怖いとか考えるどころでもなくて、とにかくイきたい、マジで。

「…い、れたら、イかせてくれる?」
「ああ、いいよ」
「ほんと? また我慢とか言わない?」
「言わない言わない。何回でもイっていいよ」
「ん…、ぁ、じゃあいれていーよ…」

いや、ほんとは良くない。俺が入れたい。
でも俺の頭はもう冷静じゃなくて辰巳がくれる快感に溶けきってたし、もう何も考えられなかった。
だから頷くと、辰巳はそれはもうものすごく嬉しそうに笑ってからキスしてくれた。

「貴史、好きだよ」
「ん、俺も好き……」
「大事にするから」
「ん…、…あ、――っ!」

ヤバい、なんか幸せかもしんない、とうるうるした瞬間。
とんでもない痛みが下半身に走る。

「ーーっ、たい! 痛……っ!」
「きっつ…貴史、大丈夫だから力抜いて」
「う――っ! だ、いじょうぶじゃな……っ!ムリ! マジで!」
「最初だけだから、な?」
「っ、っ、っ!」

デカい、とにかくデカい。俺の体感的にはマジで富士山、いやチョモランマくらいあんじゃねえのってくらい圧迫感と痛みがすごくて、手探りでシーツ掴んだ手が真っ白になるくらい力が入ってんのが分かる。
マジでこんなん入るのっていうか、確かに俺も初めての子とする時力抜いてとか言ってたけどこんなん絶対ムリ。あー俺は今までなんつう無茶なこと言ってたんだろ。

「貴史、大丈夫か?」
「お、れは今……っ」
「え、どうした?」
「全世界のネコの子達を尊敬したい……っ!」

勿論そんなこと言ってる場合じゃないのは分かってるんだけど、なんとか気を紛らわせたかったのだ。という俺の健気な努力は、しかし辰巳には全く伝わらなかったらしい。

「……おい、こんな時に他の男のことなんか考えんな」
「ーーっ! あ、ぁ、辰巳……!」

俺を見下ろす辰巳の目がちょっぴり鋭くなって、声も一段低くなって、いやここジェラシー発動する部分じゃねえからって真っ白になってきた頭の中で思う。でも名前呼んだら伸びてきた手が髪撫でてくれて、ついでに萎え始めてた前も擦ってくれた。意識がそっちに集中した隙をついて、硬いものが奥までずぶりと入ってくる。

「…っ、は、は……ね、ぜんぶ入った…?」
「ん…、ヤバい、貴史のなか」
「辰巳、ぎゅってして…」
「ん、おいで」

抱きしめられた裸の胸が熱くて熱くて、そっから溶けてくっついてしまいそうだなんて思う。お互い汗ばんでべたべたしてるから尚更。
でも幸せ、なのかもしんない。今まで誰かを抱きしめるばっかりだったけど、辰巳になら抱きしめられるのも悪くない、のかも、なんて。

俺の呼吸がある程度落ち着くのを待ってくれた辰巳が、しばらくしてから「動いていい?」って囁いた。
耳元で吐き出された息が熱い。抱きしめられて少し浮いた背中をやらしい感じで触られて少し身をよじると、中も擦れてあられもない声が飛び出る。
それが今更だけど恥ずかしくて唇を噛んでこくこく頷くと、両手で腰を抱かれてゆっくり奥を突かれた。

「…っ、ふ」
「大丈夫? 痛い?」
「…ちょっと、いたい、けど…」
「けど?」
「っあ、あ……」

俺の顔色を見てるのか、辰巳の視線をものすごく感じる。でもゆっくり抜き差しされる度に色んな感覚のせいで勝手に歪む顔を見られんのが恥ずかしくて、もう1回身をよじった。
そしたらまた中が擦れて、もうにっちもさっちも…

「や、あっ……」
「気持ちよくなってきた?」
「ふ、あ、…っ! だめ、そこだめ…!」
「ここ? それともこっち?」
「あ、うぁ、ヤバい、辰巳、たつみ…!」

中に押し込まれた辰巳のが指で散々なぶられたとこをぐりっと突いて、つまりその、何て言うか…

「もーやだぁ、気持ちいい…、やだ、なんで……!」
「……」

恥ずかしいのと混乱するのと信じられないのとで、目の奥から新しい涙がどんどん溢れてくる。ぐすぐす言いながら必死に手伸ばした俺は、その手を掴んでくれた辰巳がそれはもう嬉しそうというか楽しそうに笑っているのに気づいて息をのんだ。

「…そうか、気持ちいいか」
「え…なに、辰巳こわい…やだ、優しくしてくれるって言った、よね?」
「…ふふ」
「え? え? 辰巳? たつ…あ、あ、やめっ、ひぁああぁっ!」

……この先のことはあれだ、俺の股間、じゃなくって沽券に関わるのでちょっと語れません。

prev / next

[ back ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -