男は松、女は藤と言うけれど。 | ナノ




松姫(まつき)から連絡を貰った瞬間に支度をし、父さんから車を借りて数秒で乗り込んだ弟達に舌打ちをしてから随分時間が経ったように思う。大人しく残りのメンバーで4人の帰宅を待っていれば、暫くした頃に漸くトド松から連絡が入った。どうやらコンビニで買い物でもしているらしく、ピッピッという機械音と店員のものと思われる声が電話越しに聞こえる。

「あ、チョロ松兄さん?トド松だけど。あと1時間くらいで帰れると思うから、悪いんだけど布団敷いといてくれない?」
「あー、布団ならもうそろそろ敷いとこうかって丁度話してたところなんだけど……、もしかして何かあった?」
「松姫(まつき)が疲れちゃったみたいで熱っぽいんだよね。おそ松兄さんも帰ったらすぐ寝ちゃうと思う。」
「そっか。じゃあこっちの準備はしとくから。」
「うん、お願い。ゼリーとかスポドリは買って帰るね。」

それから数回言葉を交わして電話を切った。末弟とはいえ、トド松は兄弟の中では結構しっかりしてる方だから、食料関係に関しては特に何も心配いらないだろう。とりあえず布団を敷くべく、一緒に家に残っていたカラ松と十四松に声を掛け、協力して兄弟達の受け入れ態勢を整えなければならない。
因みに、こういう疲労による発熱の時は、感染しないからという理由で一緒に寝るから布団はいつも通りの物で。思春期の頃は「兄弟と同じ部屋なんか無理!」とか言ってたはずの松姫(まつき)だが、いつの頃からかまた同じ部屋で過ごすようになり、松姫(まつき)の部屋は半物置状態で放置されている。
そうだ、久しぶりの発熱だから喘息の吸入器の場所も確認しておかないと。使わないに越したことはないけれど、ストレスで発作が起こることもあるっていうから確認しておいて損はない。

「カラ松、十四松。布団とか準備するから手伝って!」
「あぁ、わかった。」
「あいあい!もうすぐ帰ってくるの?」
「あと一時間くらいとは言ってたけど。松姫(まつき)も兄さんも疲れてるみたいだから、先に準備しといてほしいって。」
「そうか。野生に咲く一輪の花、俺達のスイー」
「そういうの今いいから。久しぶりに松姫(まつき)が発熱してるって。コンビニ寄ってる余裕あるみたいだから重症じゃないと思うけど、一応看病できる準備もしておくよ。」

言えば、各々の返事を返してくれる頼もしい兄弟と共に、まずは二階に行って布団を敷いた。今日は布団で暴れて遊ばないあたり、表情には出ないけれど十四松も松姫(まつき)が心配で堪らないみたいだ。さっきの反応を見る限り、カラ松も大分前から気にしていたんだろうし。きっと僕の不安も2人にはバレている、が、今は不安とか心配とかそんなことを考えてる暇はない。
帰ってくるまでに準備を完璧に整え、3人の中で一番玄関に近い場所を陣取って待機。帰ってきた兄弟から松姫(まつき)を受け取って寝室に運び、松姫(まつき)から「チョロ松が準備しといてくれたの?ありがとう。」と言われる最高シチュを成し遂げるのだ。頑張れ、僕。



(160718)





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