コンビニに着くなり「トイレ行ってくる間に買っといて」なんて、ムカつくけど可愛い松姫(まつき)にあっさり騙されて、ゼリーの他にも飲食物が大量にカゴに入れられていく。我ながらバカだな、とか、思わなくもない。おそ松兄さんは財布を持ってきてないし、僕も急いで車に乗ったからポケットに入ってた数円しかない、という理由でトド松に会計を任せた。松姫(まつき)の為に出すお金なら一切文句を言わないあたり、トド松も相当バカだ。
「お待たせー。」 「おう、ありがとなトド松。」 「いーよいーよ。松姫(まつき)、何味食べる?」 「みかんの気分。」 「ん、はい、どーぞ。」 「ありがと。」
松姫(まつき)がゼリーを食べだしたのをバックミラー越しに確認しつつ、俺は再び帰路に就くために車を走らせた。おそ松兄さんもお腹が空いていたらしく、ゼリー類と一緒に買ったおにぎりを隣で頬張っている。それもそうか、こんなに遠くまで来て、途中まで歩いて帰ってきたんだからお腹も空いてるだろうし、相当疲れているはず。 それでも、おそ松兄さんはやっぱり長男で、良くも悪くも周りのことをよく見ていて、責任感も人一倍強いのだ。その証拠に、ゼリーを食べ終えて再び寝てしまったであろう松姫(まつき)の様子をそっと確認すると、ぽつりと「無理させちまったかな」なんて。
「疲れて体調崩すなんて久しぶりだからさ、にーちゃんビックリしちゃった。」 「パートも始めちゃったからね、」 「それは俺達がクズだからでしょ。」 「昔っから、兄弟で一番体弱くて体調崩しやすいくせに運動神経も頭も良くてムカつくくらい可愛いんだけど!腹立つ!」 「待って、何か話しずれてる。」 「兎に角!俺らがこいつを支えてやんねーとな!」
にしし、と笑うおそ松兄さんだけれど、心の中が責任感と不安に押し潰されそうなことくらい、兄弟だからわかっちゃって。つい「おそ松兄さんの所為じゃないから。」と柄にもなくフォローを入れれば、おそ松兄さんは「サンキュ。」と。眉を下げて笑っているであろうおそ松兄さんの悲しそうな顔が、運転してることによって見れなくて良かった。そういう顔させたくて言ったんじゃないし。
「ただ、なんっつーか、こういう時にもっと上手に頼ってくれればいいのに、って思うんだよな。甘えることだけ上手になって、本当に体調悪い時は限界来るまで言ってくれねーじゃん。」 「確かに。気付いた時には重症化してるよね。」 「今日もさー、久しぶりににーちゃんとか言って頼ってくれたけど、もっと前から我慢してたんじゃねーかって思うとさー、」
なんかすげーショックだったんだよね、俺。 そんな震えた兄さんの声なんか聞きたくなくて、耳を塞ぐ代わりとばかりに運転に集中した。
(160717)
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