Hot summer !!! | ナノ


  14.並行


朝起きた時、昨日の夜に誰の目を気にするでもなく一緒に寝たはずの名無しさんが隣に居らんかったこと、気にしてないわけやない。寧ろ朝から機嫌最悪でめっちゃイライラしたし、どこかから帰ってきた名無しさんが謙也さんと一緒やったんやって気づいた瞬間、謙也さんを殴り倒そうかと思った。どうせ謙也さんのことやから、名無しさんのこと起こしてもうて一緒にランニング行ったとかそんなもんやと思うけど。
今はどこかでサボっとるであろう名無しさんも、特に変わった様子はなかった。それが嬉しいような、悔しいような。今日の練習内容を伝えに部員を集めた部長も、いつもと何ら変わらない。

「交代でコート使ってゲームすることになったわ。シングルもダブルスもえぇで。」
「他校と組むのもアリなん?」
「誘ってみたらえぇんちゃう?大丈夫やと思うで。」
「俺はやっぱり小春と、」
「アタシはイケメンと組もうかしら!」
「……まぁ他校さんも、色んな人と戦って技盗むのが目的やろうな。」

部長の一言を聞いてわいわい騒ぐ先輩たちを放って、俺は真っ先に名無しさんを探しに歩き出した。変わらないなら、それでもえぇ。幼馴染なんて至近距離、寧ろ好都合や。この位置を誰にも渡さなければえぇだけの話。
絶対、誰にも、や。

「おい、何しとんねん。」
「あ、光!」
「試合するで。」

案の定、お気に入りの場所に居った名無しさんの傍には越前が居て。心は冷静にいようとするのに、むしゃくしゃする気持ちが抑えきれへん。半ば無理矢理に名無しさんを連れ去って、ラケットを手渡せば、きょとんとしとった名無しさんは嬉しそうに笑った。「試合してえぇん?」なんて楽しそうな顔、俺以外には見せなければえぇのに。
この距離でえぇなんて、やっぱり無理や。

「手加減すんな、アホ。」
「光も全力ちゃうやん。」

正直、名無しさんはテニスが強い。元々運動神経がえぇせいか、それとも生まれ持ったテニスのセンスか。それを隠すつもりなんか、俺が大勢の前で負けんように気を使っとるんか知らんけど、名無しさんは全力で戦わへん。ずっと一緒に育ってきたはずやのに、一歩先を歩く名無しさんが気に食わない。

俺は、ずっと昔からお前の隣を歩きたいんや。



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