Hot summer !!! | ナノ


  12.朝練と億劫


朝練っちゅーもんは、朝が苦手な俺にとって面倒臭い以外の何物でもない。そう思っとるんは、少なからず他にも居るじゃろう。朝っぱらから走らされる気持ちを部長達はわからんのか。…………うん、わからん奴ばっかじゃった。そもそも、今の俺の気持ちは朝練どころじゃない。



昨日の夜。風呂上りに立海の部屋に立ち寄ってお喋りした後に、もうそろそろ寝ようかと部屋に戻ってくるとすぐにその光景が目に入った。財前の腕枕ですやすやと寝息を立てる名無しさん。普段の仏頂面はどこ行ったんじゃ、っちゅーくらい幸せそうに眠る財前。

「名無しさんと財前、幼馴染やから仲えぇんや。」
「……そうなんか。」

俺の視線に気づいたんか、白石がそう声を掛けた。幼馴染、その言葉に収めてしまってえぇんか。この光景だけを見れば、誰がどう見ても恋人じゃ。もしかしたら本当は、白石自身が“幼馴染”という括りを自分に言い聞かせたいだけなんかもしれん。ただの幼馴染のままでいてほしい、そんな願いも込めて。

「2人とも疲れとるやろうからそのまま寝かせたってや。」
「別に気にせんが、」
「すまんな。」
「…………白石は、それでえぇんか?」

ふと浮かんだ疑問をそのまま口に出してしまったことに気付いたけれど、時すでに遅し。零れてしまったものを取り返すことはできなくて、そろりと白石の表情を確認する。怒っとる様子はないけぇ、一先ず安心じゃ。
けれど、もしかしたら俺は白石を傷つけてしまったんかもしれん。

「…………仁王くんも疲れとるやろ。今日はもうそろそろ消灯しよか。」



まるで昨日のことは何もなかったかのように、楽しそうにお喋りをしながら先頭を走る四天宝寺の集団。その中に白石と、それから名無しさんと財前も居って、昨日と変わらん笑顔を見せとった。それが妙に目障りで、苦しい。
朝練じゃからじゃ、きっと。



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