恍惚
「ねえ、ボクのこと好き?」
決して帰って来ない返事をずっとボクは待ってるよ
冷たくなった君を抱き締める。
力を無くした君の腕がだらん、と垂れる。そんな姿さえも愛おしいと感じてしまうボクは狂っているのだろうか
「愛してるよ、なまえ」
気味が悪い程、透き通る様な白いなまえの額に触れるだけのキスを落とす。
「ねえ、返事して。無視しないでくれるかい」
少し口調をきつめに言ってみる
いつもの君なら『怒らないで、N』って言ってくれるのに。
「ねえ、なまえ…」
皆は君のことを「死んだ」って言うけど、死ぬって何なんだい?
分からないよ、ボクに教えてなまえ
「死ぬって動かなくなる事なのかい?一緒にまた話してくれなくなるのかい?」
必死に話し掛けても君は応答してくれない
「嫌だ…、ボクは信じない」
なまえとまた一緒に話したり、遊びたいんだ。
ボクを一人にしないでくれよ
「酷いよ…なまえ、ボクは…」
ねえ、嫌だ。
「なまえがボクから離れようとするから、ちょっと悪戯しただけなのに…、」
床にある深紅のナイフを横目に一人呟く。
恍惚
(そんなつもりじゃなかったのに、)
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