共依存
「何処へ行ってたんだい?」
槙島さんはいつも私が何処か居なくなると決まってこの台詞を口にする。
心配しているからなのか、それとも彼女が浮気しない様に見張ってるのかは分からない
『ちょっと外の空気を吸いに行ってただけですよ』
"そんな心配しなくても"と言いたげに言葉を口にして槙島さんを宥めようとしたつもりなのに返って不安にさせたのだろう
槙島さんは正面から抱き着いてきて温もりを手探りで探すように私の服の中に手を滑り込ませてきた
「君が傍に居ないと不安で仕方ない…何故だろうね、僕の心内環境が掻き乱されるんだ」
『槙島さん…大袈裟ですよ』
「でも、君が手の届く場所にいると今度は精神異常者みたいに気が狂いそうになる」
『い、った…っ』
槙島さんが私の首筋に歯を立てた、激痛が背筋を走り声が漏れた。
薄らと濃ゆい鮮血が滲み出る。槙島さんは口元に弧を描きながら首筋に伝う鮮血に舌を這わせた
「痛いかい?それとも…っ、快楽を誘うかい?」
妖艶な笑みを浮かべながら私に問いかける
痛い筈なのに恍惚としている槙島さんの表情が私を掻き乱し身体はもっと、もっと、と歪んだ愛情を受け入れ、求めている
「ん、…はあ、愛してる」
『私も、です!』
「人を愛するというのはこんなにも人を狂わせてしまうのかい?それとも、僕が狂っているだけかな」
正常と言うには烏滸がましいが、狂っているのは私も同じ筈
槙島さんを愛している私も可笑しい
「このままなまえを誰も居ない僕だけの世界で閉じ込められたらどんなに幸せなんだろう…」
きつく離れないように抱き締められ、耳元で囁かれる。
槙島さんの色っぽい声色に身体が小さく跳ねる
「不安なんだ。君が何処か違う男の元へ行ってしまうんじゃないか、って」
『何処にも行きません、私は槙島さんとずっと一緒です』
「僕も、堕ちて逝く時は君と一緒だ…」
共依存
(一緒に狂おうか。)
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