春!春がきました。……日本の春と言ったら何か。

「お花見ー!桜ー!」
「うぜぇんだよテメーは!大体なんでテメーら2人までついて来てるんだよ!!」
「もー獄寺は相変わらず喧嘩腰だなあ。なんでって言ったら、獄寺の敬愛するリボ先生に誘われたってさっきから言ってんじゃん。先生の言うことなんだから文句ないでしょ。」

ねぇじろくん!とじろくんに言うけどムッスリして答えてくれない。まあ無理矢理連れてきたも同然だもんね。
獄寺は俺の言葉に不満そうに唸っている。

「でも楽しみだなあ……日本の春の代名詞って言ったら桜だもんね!」

お花見てったら、屋外でドンチャン騒ぎするやつだ。ワクワクするね!テレビで見たやつは楽しそうだったし、桜も綺麗だったしね。

「へえ、会長花見は初めてなのか?じゃあ調度いいな。多分今が見頃だぜ!」
「……場所…取れるよね……でなきゃ俺どうなることか…。」
「大丈夫です十代目!まだ早いですし、きっと空いてますよ!!」

春になっても、やっぱり沢田はかわいそうなキャラなんだな。よきかなよきかな。沢田はそうでなくちゃ。

「……お前今大分最悪なこと考えてただろ。」
「……気のせい気のせい!考えすぎだよじろくん!」

じろくんの言葉に乾いた笑いで返す。
いやあ………平和ですねえ……。

「あれ?誰もいないんだ。」
「おーラッキー!」
「一番乗りだ!」
「これで殺されずにすんだ……。」

なんだ。テレビみたいに宴会とかやってると思ったのに。辺り一面桜だけ。人は俺らしか見当たらない。朝早いから?それにしても、閑散としてるなあ……。

「……あまりに静かすぎねーか…?」
「だよね、じろくん。」

人っ子一人いないっておかしいよ。俺達みたいに場所取りする人だって普通いるはずた。これが“嵐の前の静けさ”ってやつかね。

―――そして、予感的中。

「おいお前ら、ここは立入禁止だ。」

学ラン、リーゼント。
こんな古風な格好するのなんて並中の風紀委員しかいないよね。そのうえ、この桜並木一帯の花見場所は全て占領済みだ、なんてバカなこと言っている。はは、風紀委員長さまの教育の賜物だね。
もちろんそんな話に納得できる訳もなく、山本が反論する。しかしその程度で引き下がるわけもない。
それで、まあ……短気な獄寺が我慢できるはずもないよねってことで、風紀委員さんは殴られてしまった。かわいそうに…。

「何やら騒がしいと思えば君達か。」

理不尽な行動も、絶対、今木に寄り掛かっている委員長さんの命令なのにね。

「僕は群れを見ずに桜を楽しみたいからね。彼に追い払ってもらっていたんだ。」

……どうして自分が人混み嫌だから人を追い出すって思考になるかな。つくづく迷惑な人だ。自分が山奥にでも行けばいい話じゃない。

「でも君は役に立たないね。後はいいよ、自分でやるから。
………弱虫は土に還れよ。」
「!仲間を…!」
「いや……あんたが還りなよ。」
「メイノさんーーーーー!!?」

沢田に何言ってんですか!と怒られるけど、俺の言葉結構正論じゃない?だって委員長さんがいなくなれば全て丸くおさまるんだし。
ていうか結局自分でやるなら最初からやれよ。

「うるさいよメイノ。
……見ての通り僕は人の上に立つのは苦手なようでね。屍の上に立ってる方が落ち着くよ。」

なんて無茶苦茶な。人の上に立つの苦手って、風紀委員長で不良のトップのくせして。………よく考えなくてもこの人のプロフィールおかしいな。
今の台詞も、3人は顔を青くして固まっているけれど、俺からしたら完全にただ痛々しい人だ。ドン引き。

「いっったーーーーー!!」
「君さっきからうるさいんだよ。わからないのかい?」
「俺何も言ってないから!」
「顔に全部書いてある。」

いつもうるさいと言って殴られるから今回は声を出さず怪訝な目を向けていただけだ。それなのにトンファーで殴られた。
理不尽!!!
物凄く痛かったから、じろくんに頭をなでてもらっていると、沢田に冷たい目で見られた。
……地味に傷つくんだけど。

そうしている時に、その場にそぐわない能天気な声が1つ。

「おー絶景絶景!…だってのに……っかー!やだねー男ばっか!」
「Dr.シャマル!?」

おじさん……酒臭い。
なんでいるんだろうかと思っていると、花咲かじいさんのコスプレをしたリボ先生が俺が呼んだんだ、と登場。
先生を見た委員長さんは会えてうれしいよ、と楽しそうに言う。……気持ち悪っ!純粋に楽しそうな委員長さん気持ち悪っっ!!

「ヤキモチか?メイノ。」
「はあ!?意味わかんない!!」

勝手に心を読んできたリボ先生がニヤニヤしながら言うけど、本当意味わかんない!なんで俺が委員長さんにヤキモチなんかやかなきゃいけない訳?俺はじろくんにしかヤキモチはやかないって決めてるから。
大体……先生って初めからなんか勘違いしてるよね。
俺が委員長さんと口論になるのは単に委員長さんがムカつくからだ。

「へーえ、そういうことなのかー……メイノ?」
「おじさんまで変なこと言わないで!んな訳ないでしょ。
てじろくん!!本当違うからね?俺が愛してるのはじろくんだけだよ!?」
「……うっせ、別に聞いてねぇよ。」

うそだ!!だってすごい目で睨んでたもん!……もう最悪だ。せっかくあの喧嘩からはずっとじろくんと仲良しだったのに、また怒ってるじゃない。
俺がじろくんに詰め寄っている間に、先生と委員長さんが花見の場所について取引をしていたが、知ったこっちゃない!必死にまくし立てると、最後にはわかったから黙れ、とげんこつをおとされた。
うう……さっき委員長さんにやられたばっかなのに、酷い。

「おい、お前らも聞け。」
「何さ……?」
「花見の場所を賭けて勝負するんだぞ。」

いつの間にそんなことに……。何でただの花見がそんな危険な事になってるんだ。つかおじさんもいつの間にかのびてるし。
しかも委員長さんとゲームって言ったら、病室での一件のおかげで、沢田がぼこられてる図しか浮かばない。哀れ沢田。

「お前らも参加するんだぞ。」
「え、なんで……やだし。」

獄寺と山本はやる気満々なんだから、やる気ある奴らにやらせればいいじゃん。まあ沢田は強制参加だね。リボ先生の生徒だし。

「ていうかさ、委員長さんがいなくなればいい話じゃん。
という訳で俺とじろくんは不参加ねー。」
「君本当僕に喧嘩売りたいのかい?
………まあ、メイノが参加しないのは賛成だね。弱すぎて逆にストレスがたまる。」
「ほーらね。あ、ちなみにじろくんの参加は俺が許さないから。そんなくだらないことでじろくんの綺麗な顔に傷でもついたら俺怒るよ。」

俺の言葉にため息をつくじろくんを引っ張って、伸びてるおじさんのそばに避難する。
後ろでは獄寺がお任せ下さい十代目!あんな奴らがいなくても俺が必ずや勝利をうんたらかんたら…とノリノリだ。沢田はまだ観念してないみたいで、必死になって何かを言っている。諦めなよ沢田……それが運命だ。俺だったら逃げるけど。
沢田の制止もむなしく、そろそろ始まる。
そういや獄寺ってダイナマイト使うんだっけ?……トンファー対ダイナマイトだったら普通にダイナマイトが勝ちそうなものだけど……、委員長さん普通じゃないもんね。

「……んで…おいヤブ医者…お前はいつまで猿芝居しているつもりだ。」
「猿芝居じゃねぇ名演技だよ天名。現にメイノは気づかなかっただろーが。」
「悪かったね……。」

……気づく方がおかしいと思うのは俺だけ?いやぁ……そんなことはないでしょ。俺は一般的で他の人が化け物なんだ。よし、決定。

「いやー、それにしてもメイノだけじゃなく、天名までいるとはなあ。」
「……………………。」
「え!?じろくんおじさんと知り合いなの!?」

おじさんは小さい頃の俺は知ってるらしかったけど……まさかじろくんとも知り合いだったとは!俺そんなの聞いてない!とじろくんに詰め寄る。
いつも通り、なんで言う必要があるんだって返されると思っていたら、じろくんは目を丸くして驚いていた。

「………じろくん?」
「…お前…………、いや……。お前知らねぇのか?コイツはうちの学校の保健医だぞ。」
「え゙!?嘘!」

おじさん女の子しか診ないのに?いいのかそれで!

「はあ!?メイノは仕方ねーとして、天名お前まで俺を忘れ……ムグ!?」
「黙れヤブ医者。」
「ちょっ……じろくん顔超怖い!」
「…お前も黙れ。」

何か言おうとしていたおじさんの口に、じろくんが落ちてた木の枝を突っ込んだ。
その時のじろくんの顔が……般若?それより怖いよ絶対。
ギロリと睨んできたじろくんに顔を青くしていると、銃声と沢田の声が聞こえる。……いつもの沢田の声じゃない。あの白目の沢田だ。
………やだな。あれ軽くトラウマなんだ。
隣からも盛大なため息が聞こえる。
うん、気持ちはわかる。だって意味不明なんだもん。今の状況。
花見の場所を賭けた勝負で、獄寺と山本は委員長さんに敗れ、今は沢田と委員長さんが闘っている。
委員長さんの武器はトンファー。これはいつもと変わらない。でも……沢田が使っている武器……?武器って言うのかは知らないけど、それははたきだった。
しかも互角。
なんではたきとトンファーが互角なの…って言っても、トンファーでダイナマイトと山本の武器、刀に勝った化け物がいるからね。
多少うんざりしながら見ていると、沢田の顔が元に戻りはじめる。やった!お帰りなさい沢田!!

「わあ!!ちょっ…待っ!ひいぃ!!!」

沢田はもう闘う気力がなくなったのに、委員長さんはそんなこと知らないよ、とばかりに攻撃をしようとする。
沢田ドンマイ。
南無、と合掌した時、ドサ、という音が。

「…………うそ…。」

何かと思い、ふとそちらを見れば、委員長さんが地面に膝をついていた。
まさか沢田がそんな…………。
呆然としているのは俺だけじゃなく、沢田も驚いた様子で、俺がやったの!?と言っている。

「違うぞ。あいつの仕業だ。」
「おーいて。ハンサムフェイスに傷がついたらどうしてくれんだ?」
「Dr.シャマル!?」

白々しくおじさんが言う。……おじさんさっきまで全然痛そうじゃなかったじゃん。
なんでも、委員長さんはおじさんの陰謀により桜クラ病とやらにかかってしまったらしい。桜の前では立ってられなくなるんだって。………なんてマヌケな病気…。

「………約束は約束だ。せいぜい桜を楽しむがいいさ。」

そんな捨て台詞を吐き捨てて去っていった委員長さん。
委員長さん……それ普通に悪役…しかもザコキャラの台詞です。

あまりにもふらふらしてたから大丈夫なのか?とは思うけど、委員長さんだし平気だよね。
第一俺が委員長さんの心配する義理なんてないし。
何はともあれ、これでお花見ができる!

「ツナさーん!」
「みんなお待たせ!」

タイミングよく、女の子組が登場した。女の子がいると場が華やぐよ、本当。獄寺はリボ先生の愛人さん見てぶっ倒れちゃったけども。

「はひ!メイノさんお久しぶりです!お隣りのクールな方はどなたですかー!」
「三浦ちゃんお久しぶり。カッコイイでしょ?この人はね、じろくんって言うんだよー。」
「…………天名だ。」

ありゃ。せっかく“じろくん”って紹介したのに訂正されちゃった。
じろくん目つき悪いから、せめて愛称で怖くないイメージつけてあげようかと思ったんだけどな。

「とってもクールです!ね、京子ちゃん!」
「だね、ハルちゃん!
会長と副会長……えと、メイノさんに天名さん、ですか?兄がお世話になっています。」
「いやいや、こちらこそ?それにしても妹ちゃん礼儀正しいねえ。これで笹川の妹って……。」
「……詐欺でしかねぇな。」

妹ちゃんのことは持田事件の時に1度だけ見たけど、本当笹川に似てないよ。顔も性格も。
俺と兄さんもそんなもんなのかな……今度沢田辺りに聞いてみよう。

「本当にすいてていいわね。ツナ……よくやったわ。」
「いや…まあ……うん……。」
「委員長さんが人払いしたおかげで、逆に楽しめそうだねー。」

混んでたら、こんな大勢では無理だったからさ。
沢田も愛人さんに殺されずにすんだし。

「あ……メイノさん…そういえば雲雀さんって大丈夫なんですかね…。」
「なんでそれを俺に言う訳…。」

委員長さんがどうなったかなんて知らないし別に知りたくもない。
それでも沢田は気になるみたいで、でも……と呟いている。そんなに気になるなら探してくれば?という提案に、沢田は殺されますよ!と叫び声をあげる。

「じゃあほっとけばいいんだよ。平気でしょ、あの人化け物だし。」
「いや…普通じゃないのはわかってるんですけど……メイノさん行かないんですか?」
「……俺が?なんで?」

なんで俺が委員長さんのためにそこまでしてあげなきゃだめなの?
委員長さんが変な病気になったのも、あの人の自業自得。人がいるのが嫌なら最初から花見なんかしなきゃいいんだ。
でも……となおも食い下がる沢田に、今度は獄寺が動いた。

「ゲホッ…テメー十代目がこれほど言ってんだぞ!さっさと行きやがれ!…ガハッ!」

必死に言葉を紡ぎ、言い終わると同時に生き絶えた獄寺。………まるで遺言のようだ……獄寺よ。そうした獄寺の遺言をきっかけに、他の人たちまで口々に言い出す。

「会長ー行ってやれよ。いくら雲雀だってありゃ辛いだろ。」
「雲雀さんどうかしたんですか?だったらメイノさん……助けてあげるべきですよ!」
「京子ちゃんの言う通りです!困っている人は助け合わなければ!」
「そうだぞメイノ。行け。」
「リボーンの言う事は絶対よ。さっさと行きなさい。」

…………ナンデスカコレ。
イジメ?いじめだよねコレ。助けを求め、じろくんとおじさんの方を見ると、じろくんにはめんどくさそうに目を逸らされ、おじさんには手をひらひらされた。

ていうか何気委員長さん愛されてるのか!?なんであんなに頭いかれてる人が!ずるい!!
絶対おかしい!と嘆くが、先生にさっさとしろと脅された。


「もう……なんで俺が……。」

結局、俺は皆の責めに勝てませんでした。せっかくじろくんと初のお花見だったのに!
でも、どうせあの人のことだから、もうとっくに帰っちゃったと思うんだよね。
三浦ちゃんと妹ちゃんに桜餅2つ押し付けられたけど、俺が全部食べちゃっていいかな。それで渡したって事にして、皆の所に帰ればいいんだ!

「よし、ナイスアイディア俺!!」
「………君さっきからぶつぶつうるさいんだけど。」

…………………………。

「げっ!?委員長さん!?」

気配なかったよこの人!
委員長さんは、俺の後ろのベンチに座っていた。ここまだ桜見えるのに………平気なのかね。

「くそっ……あの保健医…!」

平気じゃないみたいだ。悔しげに言ってるけど、動けないらしい。ここまで弱ってる委員長さんって珍しいねぇ。おもしろい。
写メ……いや、ムービーでも撮って、後でからかってやろうか。

「……そんなことしたら…どうなるかわかってるよね…?」
「え゙!?なんで!?」
「君はわかりやすいんだよ。変なこと企んでも無駄なんだからやめればいいのに。」

…………掴み所がない所がチャームポイントです、俺。少なくとも山本には何考えてんのかわかんないって言われたことあるし。んなこと言われると自信失うんですけどー。
まあいっか。化け物に人間の理屈は通じないのさ。

「ほら委員長さん、立って!」
「だるい。嫌だ。」
「嫌だじゃない!委員長さんを桜見えない所まで連行しなきゃ俺が皆の所に戻れないの!」

せっかくじろくんもいるのに!何が悲しくてこの人といなきゃならないわけ!?
立て、嫌だ、の応酬に負けたのは委員長さん。やった!勝った!

「…まだふらふらしてるねぇ。……はは、うける!肩でも貸してあげようか?あ、もちろん貸しね。」
「いらないよ別に。君本当何しに来たのさ。」
「そうだそうだ!んとね、これ三浦ちゃんと妹ちゃんから預かってきたの。」
「……三浦?妹?」

ああ、わかんないよね。そりゃ。
三浦ちゃんはいくら説明してもわからないだろうから、妹ちゃんについて、笹川の妹だって教えてやる。

「ああ…あのうるさい奴の……………いらない。」
「はあ!?ちょっと!確かに笹川はうるさいけど妹ちゃん結構まともだから!それに女の子からの贈り物を突き返すなんて最っ低!!」

……と、いうより、これ渡さないと俺の責任になるじゃん。
委員長さんのポケットに無理矢理桜餅を入れて、捨てたら呪ってやる!と一言。委員長さんにはため息をつかれたけども、これで任務完了だね。

「よし!じゃあ委員長さん、寄り道しないで帰るんだよ!」
「君なんなのさ。」

まあとりあえず、桜は見えなくなったから、俺の任務は終わり。
じろくん待っててくれ!
さらば!と委員長さんに言うと、ガシ、と腕をつかまれた。

「もう何!?委員長さん…俺もうじろくんの所に………って委員長さん?」

バッと振り返ると、委員長さんが俺をガン見していた。……本気で何なの、この人。

「……君は…………、」
「なに?まだ具合悪い?」

「……………………………………はあ……。」
「人の顔見てため息つくなよ!」

しばらく俺をガン見していた委員長さんが突然深いため息をついた。

「もういいよ。君と話してると疲れる。」
「はあぁぁぁぁ!!?」

意味わかんない!この人本気で頭いかれてるよ!俺の顔ため息つかれるほどひどくないから!!

「うるさいな…行くなら早く行きなよ。」

……なんだろう、この胸のモヤモヤは。…………っっムカつくんだよこの人が!!








「……さっさと出てきなよ天名。僕だって暇じゃないんだ。」
「…うっせぇ雲雀。花見に来てた暇人が何言ってやがる。」

メイノが走り去った後に声を掛けられる。やはり気づいていたか。
雲雀とは学校のことで接点は多いが、こうして話すことは初めてだ。というか俺自身あまりコイツ話したくない。クソガキやヘタレとは違う意味で気にくわないのだ。

「彼をとられそうだから?
彼、前までは君とずっと共に行動していたんでしょ?変わってしまったのが気に入らないんだ。」
「取る取らないなんて考えたこともねーよ。」

検討違いも甚だしい。
そう言えば雲雀は鼻で笑う。………ああ、メイがよくムカつくと騒いでいるが、それは間違っていないな。

「お前は気に喰わない。」
「失礼じゃないかい?」

何を知っているのか、コイツは。
確かに俺はメイに変わって欲しくはない。あいつ自身のためにも。

「お前、何がわかっている?」
「何も?僕は何も知らないよ。
ただ、見ていて疑問に思うことがあるだけ。」
「…………お前、それメイには言うなよ。」

雲雀が感じる違和感というものを、メイが聞いたら流石にどうにかなるだろうか。俺が隠していること、あいつの過去をを思い出すだろうか。………そして、隠していた俺をどう思うだろうか。

「今のところ特に言うつもりはないけど。
……僕には理解できない。君は何をしたい?彼の目を覆って、彼の行動範囲を狭めてるのは君だよ。」
「いいんだよ。あいつは今で満足してる。これ以上を知れば、苦しむのはあいつだ。」

そう、これで良い。実害など何もない。

「………まあいいさ。でも、きっと時間の問題だよ。
今でさえ気づいていないのが疑問だ。彼自身の身体のことなのに。」

「わかっている。それでも、その時が来るまで…………。」

言ってはいけない。いや………言いたくないんだ。
あいつに知られたくない。気づいたら、きっと壊れてしまうから。





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