二日目









「そういえば、てめぇ名前は?」

こいつ…ご主人様に向かって『てめぇ』とか。

「みょうじなまえですけど。」


未だに信じられない。

目の前にいる男が携帯?泣ける。

これセクシャルハラスメントで訴えられないかな。

「なまえ、ね。」

ーーードキッ

あ、何してるんだ私。

なにが『ーーードキッ』だ。

少女漫画じゃあるまい。

「おい、なまえ。」

「何?」

「…以外とアドレスん中男いるんだな。」

「当たり前でしょ!てか勝手に見ないでよ変態!」

「変態も何も俺は携帯だっつーの。」

「きもい。」

「…」

あ、やべ。ちょっと怒ってる。

「…てかよ。」

「は?」


私は自分の夜ご飯の準備をしようと、台所に向かった。

さっき買った食材をエコバックから取り出す。

今日は私の好きな魚を使った料理。

自炊も一人暮らしの楽しみの一つだ。

「…この男達、全員遊びか?」

「んなわけないでしょ!何言ってるの。」

私は持っていたほうれん草を男に向けて言った。

「ふーん。ま、そうだな。」

「腹立つなこの変態。」

「誰が変態だ。俺は土方。」

「は?」

「土方十四郎って名前だ。」

「…」

私はほうれん草を手に持ったまま呆然とした。

え。名前なんかあるの(笑)

「何が(笑)だ。」

「いや。つい。」

「だから変態とか言うな。」

「へいへい。じゃあ、何て言えばいいの?」

私はほうれん草を包丁で切る。

「…何でもいい。」

「えー何ソレ。」

自分から言ったクセにー。

「ああ!?いいんだよ別に。好きなように呼べ。」

「変態。」

「名前だ!名前!」

「じゃあ、十四郎?」

「……っ」

私は振り向きながら言った。

そしたら十四郎は顔をふせた。

「…?」

私は少し顔を覗くように十四郎を見た。

「…どうしたの?」

「…別に。なんでもねェ。」

「…そ。」

私は再び台所に向かった。

ほうれん草は切れたので次はメインの魚だ。

今日は鱈。

普通に塩焼きにして食べよう。

「十四郎も食べるの?」

「い、いや。」

「だよね。」

よかった食費が二人分いるのかと。


私はもくもくと準備をする。

その間、十四郎は何も話さなかった。









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マジで俺どうかしてる。

あいつに名前で呼ばれた時、すげえ胸がドキドキした。

俺は携帯なのに。

恋なんかもってのほかだ。

…人間になれれば。

こんな苦労なんてしなくていいのに。

俺はドキドキして、余計意識してなまえと話せなかった。

けど、アイツの背中は落ち着いた。






続く。


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