あたたかいクリスマスについて  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ノエル、誕生日おめでとう!」 待ちに待った来訪に、思わず口元が緩む。 「ありがとう。さ、入って?」 「お邪魔します!」 部屋に招き入れ、後手で扉を閉めた。コートを脱ぐ横顔に見惚れてると、頬が赤いことに気が付いた。頬だけじゃない。鼻も、耳も、指も。 「……外、寒かった?」 「え?」 「顔が赤いからさ」 そう答えれば、納得したように頷いた。 「寒かったよー。雪も降るかもね。ホワイトクリスマスになるかなぁ」 楽しみ、と笑う彼女を引き寄せて、冷え切った小さな手を自分の手で包み込んだ。 「……ノエルの手、あったかいね」 「君の手は冷え切ってるよ」 早く暖かくなるようにと口元に寄せて息を吹きかける。大人しくされるがままだから、ついイタズラ心が芽生えてきた。 「セレナちゃんは冷た過ぎ。……暖めてあげる」 息を吹きかけた手に今度は唇を寄せる。わざとらしくリップ音をたててキスしてみれば、彼女が真っ赤になって口を開けているのが分かる。 何か言いたそうに口をぱくぱくさせているけど、結局困ったように目尻を下げただけだった。 「嫌だった?」 「……嫌じゃないよ」 「よかった」 「……ノエル、分かってて聞いたでしょ」 「うん、分かってた」 それからまた指先にゆっくりと近付いた。唇でゆるく、吸うように啄めば、セレナちゃんは小さな声を漏らす。 「ん……」 「暖まった? まだならもう一回するけど」 「あ、暖まったから……!」 遠慮なんてしなくて良いのに、と思わず笑えば彼女は恥ずかしそうに俯いた。 恥ずかしくなると困ったような反応をするから、余計にからかいたくなるのだ。 「今度はこっちかな」 片手を離して頬に触れる。照れて熱を持ったせいか、先程よりは冷たくなさそうだった。 俯いた顔を覗き込み、触れた反対の頬に口付ける。それから鼻にも、おでこにも。 ついでに耳朶へやんわりと歯をたてて、今度は耳下から鎖骨へと、沿う様にして首筋を伝う。 くぐもった息遣いが聞こえてきて、何も考えられなくなった。彼女の節々はとっくに熱が戻っていて、むしろ熱いぐらいだというのにやめられない。 用意した料理もこの際後で良い。せっかく祝ってもらえるんだから、今日ぐらい我儘を言ったって許されるだろう。 (……来て早々だけど、もう良いかな) そんな邪な思いを打ち消すかの様に、セレナちゃんが呟いた。 「あ……!」 「ん? どうしたの?」 「ケーキ!」 「ケーキ?」 「そう! ノエルにケーキを作ってきたの! 自信作だよ!」 今までの甘い雰囲気を忘れたみたいにはしゃぐから、この先を続けようとは言えなくなってしまった。 (まぁ、いいか) このあとも一緒に居られるんだし。ケーキだつて、俺の為に作ったってことが嬉しいし。 「ねぇノエル。お誕生日おめでとう」 何回でも言いたいの、なんて可愛らしいことを言う彼女をぎゅっと抱きしめて、ありがとうと囁いた。 fin*12/25 |