結局このあと言わされました「愛してる」
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※恋人でまだみんなに内緒の期間



 「貴女は本当に可愛い。離れたくなくなる」

 ユアンは息をするように甘い言葉を吐く。それが嬉しいけど同時にとても恥ずかしくて、返す言葉が見つからなくなるのはしょっちゅうだ。

 「照れないで。ちゃんと貴女の顔を見せて」

 頬に優しく触れてきたユアンの手のひらが暖かい。その感触を意識してしまって、自分でも分かるぐらいどんどん熱があがっていく。

 「……真っ赤になったセレナも可愛い」

 ユアン、と彼の名前を呼んで「もうやめて」と伝えた。恥ずかしさで頭がおかしくなりそう。それなのにユアンときたら恥ずかしがる様子もないし、それどころかちょっとご機嫌なくらいだ。

 「やめない。その表情もすごく、好きだから」

 好きという言葉に反応して、どくんと心臓が波打った。私の反応を楽しんでるみたいにユアンが口元を緩ませる。こういう時だけ意地悪になるのってズルい。

 「そんなにやめてほしい?」
 「そりゃ、恥ずかしいし……」
 「それが理由ならやめてあげない。俺は貴女の恥ずかしがるところも好きだって言ったでしょ。……諦めて?」

 (……やめる気なんて最初から無かった癖に)

 いつの間にか離れてたユアンの手と空いてた方とが組むようにして腰の後ろに添えられた。おかげですっぽりと包み込まれるような体勢となる。
 ユアンの顔が間近にあるから、思わず息を飲んだ。この至近距離になかなか慣れない。

 「セレナが俺に、愛してると言えたら離してあげる」

 いつも恥ずかくて言えない台詞を言わせようとするなんて、今日はどこまでもいじめっ子だ。

 「言ったら離してくれるの?」
 「うん」

 (……せっかく会えたのに)

 離れてしまうのは寂しいだなんて、さっきまでと思ってることが違う自分に呆れてしまう。でもこの時間が終わったら、次にこうやって触れあえるのは何時になるの?

 「ユアン、あのね……」

 決心した私の次の言葉を待つように、ユアンが顔を覗き込んできた。

 「……まだ、離れたくないから、言わない」

 (い、言っちゃった……!)

 赤くなった顔を隠すように俯いたけど、ユアンが何も言わないから恐る恐る顔をあげる。すると、私と同じように頬も耳も赤く染まったユアンが驚いたようにこちらを見ていた。

 「ユアン……?」
 「……貴女は俺を喜ばせるのが上手すぎる」

 言うが早いかぎゅっと抱きしめられて、胸元にぽすりと倒れこむ。

 「セレナの方が一枚上手だった……」
 「そう、かな?」
 「そうだよ。きっと俺はこれから先も、貴女に敵わないと思う」

 ユアンが柔らかい声でそう言うから、私もそっと、背中に腕を回した。




fin*

 

 





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