シンデレラに口付けた24時  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ※ルイ続編 ロイヤル√後 アクセサリーを外してドレスも脱いで、お風呂も済ませた。後はもう寝るだけだというのに、1度ケースにしまった指輪を取り出してゆっくりと指にはめ直して眺めてみる。あの日ルイがはめてくれたダイヤの指輪が、私の薬指できらめいた。 「セレナ」 ふわりと香ったのはシャンプーなのかボディーソープなのか、とにかく良い香りを纏わせたお風呂から上がったばかりのルイが私の名前を呼んだ。 「指輪、気に入ってくれたみたいで嬉しい」 風呂上がり特有の湿り気を帯びたルイが近付いて来て、向かい合うような体制で優しく腰を引き寄せられる。 「うん。だってルイがくれたものだからお気に入りだよ。……それにこの指環は特別なものだし」 左手の薬指で光る大粒のダイヤを見るたび幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていくのだ。2人きりの教会でプロポーズされた瞬間を何度だって思い出すし、自然と微笑んでしまう。 「セレナにすごく似合ってる」 「……そうだと嬉しいな」 私とルイのちょうど真ん中、胸の前に来るよう持ち上げた左手に、柔らかな視線が向けられる。 「セレナのことを考えて選んだんだ。だからその指環はセレナが1番よく似合うよ」 私のためだけにルイが用意してくれた、私しかはめない大切な指環。ルイがくれたものを身に付けていられるだけでも嬉しいのに、似合うと言われるとますます幸せに溺れてしまいそうだ。 何度見たってどきどきするルイの優しげな面持ちに呼吸を忘れそうになる。 「……次のパーティーでも、この指環をはめたいな」 見惚れてしまったのを誤魔化すようにルイから指環へと視線を移す。ぽそりと呟いた台詞に「パーティー以外ではつけてくれないの?」と返された。 「うーん……、つけたいけど……」 はめる頻度が高くなれば、それこそ日常的につけるとなると気を付けていても傷付いてしまうことだってあるだろう。それが気がかりで普段使いするのが躊躇われるのだけど、ルイは私に「どうして?」と言いたげに首を傾げた。 「傷ついたら嫌だし、大事にしまっておきたい気もするかな」 「……ダメだよ」 別に怒ってる様子もなく、私に好きだと愛を囁く時と変わらない柔らかな声のままルイが静かにそう言った。それから私の腰に添えていた手をゆっくり動かし、もう一度抱え直すようにきゅっと手を組んだ。 「これはセレナが俺と結婚したんだって印だから。指輪してる姿、ちゃんと俺に見せて?」 ルイと私、二人にとって特別な指輪なんだと紡がれる幸せがくすぐったい。 「そっか……。そうだよね」 嬉しいことも辛いこともたくさん経験してきた。今こうやって側に居られることや、ルイと想いが通じあってることがなんだかすべて夢みたいで、でも夢じゃないんだと薬指を見て実感する。 ありがとう。大好きだよ。ずっと隣に居させてね。込み上げてくる色々な想いを言葉では表しきれないから、精一杯の気持ちを込めて、指輪にそっとキスをした。 「……そっちじゃなくて、こっちでしょ?」 指輪にキスした私が顔をあげると、待っていたかのようにルイから唇へ一つだけキスが落とされる。 「赤くなってるセレナも可愛い」 そうやって慈しむようにこぼされた台詞は心臓に悪い。さっきから早鐘を打つようにとくとくと音を立ててる。 「……セレナ、どきどきしてる?」 「だってルイが、急に……」 「うん。俺のせいだね」 全然悪びれてもない口ぶり。それどころか、にこやかな顔で今にも笑い声がこぼれそうだ。 「セレナはそうやって、この先もずっと俺にどきどきしてて」 笑みを乗せたルイの唇が弧を描いて、触れ合いそうなほど真近に迫る。 「……まだ起きてられる?」 疑問系だけどきっとルイの中では答えがもう決まってて、それは私の答えと同じはずだ。 「眠くないよ」と答えるつもりで開きかけた唇をルイに優しく噛まれる。全部を伝えなくても返事はちゃんと伝わってるだろうから、まぶたを閉じて抱きしめるようにルイの背中に腕を回した。 やわやわと甘噛みするように繰り返されるキスで唇を濡らされてたら、いつの間にか時計の針が24時を回ってた。 fin* ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大粒のダイヤがついた指環はめて日常生活に支障はないのかとかは考えない方向で |