半兵衛さんとデート!

――静寂に包まれて、私は落ち着きなく視線をさまよわせる。


「くす、夢子君、どうしたの?」

不意に、目線を小説の一ページに落とされたまま半兵衛さんがそう問いかけてこられた。

『……うぅ、それを聞きますか?』

小声で漏らしたセリフは、もうすでに涙声。

はい、だって私、今羞恥心で涙目ですもの。


「……ふふ、僕の膝の上じゃ落ち着かない、か」

『あ、当たり前ですよぅ』

真っ赤になっていると思う顔で、必死に半兵衛さんを睨むも、彼はどこ吹く風。


なんていうか、何故、公共の図書館の片隅で、ソファに座っている半兵衛さんの膝の上に横向で座らされているんでしょうか?

これは何かの罰ゲームですか?

「心外だね。罰ゲームだなんて……。僕のそばにいるのは嫌かい?」

『う、あう、そういう意味では』

やっと本から目線を外した半兵衛さんの瞳が、私を射抜くように見つめられる。

瞬時にどもる私は情けないかもしれません。

『うくーぅ……』

「わぁ、可愛い鳴き声だねぇ。ふふ、あまり僕を刺激しないで。ここでは流石に君を抱けない」

『だけなっ?!』

「しー……」

素っ頓狂な私の叫び声は、静かな館内に響いて。

悪戯っぽく人差し指を唇に当てられている半兵衛さんに眩暈がした。


……もう、心臓が持ちません。








『うわぁん、菊ちゃあんっ!半兵衛さんが色気を使って、私をからかうんですーっ』

「あぁ、だから心外だな。僕はからかっているつもりなんてないのに」

「……余計たちが悪いわ、竹中半兵衛」

「そいかい?……でも、ま。今日はゆっくりじっくりと、僕だけに可愛い夢子君を堪能できたから良しとするかな。クスクス」

「なっ?!殺していいの?あんた、殴らせろーっ!!」


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