元就さんとデート! 「……」
『……』
その沈黙は重いわけではなくて、寧ろ心地の良い時間でした。
真剣に本屋さんに陳列されている書物を選ぶ元就さんの横顔は、とても綺麗で。
隣でその横顔を眺めていられることが、なんだか誇らしくて嬉しかった。
「……これにしよう。……夢子、本当に良いのだな?」
『あっ、はい!元就さんとのお出かけ記念に、私、贈り物にさせてください!』
突然振り向かれて、見つめていた事実が急に恥ずかしくなり、私は顔一面が火照るのを感じながら下に俯いて答える。
若干早口言葉みたいに急いでセリフを吐いてしまったけれど、たぶんちゃんと聞き取れるはず。
「……感謝するぞ」
不意に元就さんがそんな優しい言葉を紡がれて、ぽんっと私の頭の上に本を置かれた。
本に手を添えながら顔を上げれば、愉快そうに口元は弧を描いている。
あぁあっ?!
感謝の言葉に驚いたらいいのか、元就さんの素敵な笑顔に驚いたらいいのか……うわぁ!とりあえず、元就さんが優しいですっ!!
本屋をあとにして、元就さんが日輪に近い場所にいきたいと言われたので、高層ビルの屋上庭園にやってきました。
そこに設置されているベンチに腰をかければ、不意に元就さんが横に寝転がられて、私の膝の上に頭を乗せられる。
あ、あれ、これって膝枕ですか?
『あ、あの、元就さん?!』
「……黙れ。今は静かにしていろ。我は少しこの至福の時を味わいたいだけだ」
仰向けになられて、瞼を閉じられた元就さんの顔を眺めながら、私はふぅっと息を吐く。
『……確かにぽかぽかして気持ちいいですもんねー』
のんびりと独り言を呟いて、また元就さんの綺麗な顔を眺めることにした。
「……菊一、夢子の鈍感さはつくづく腹が立った。貴様の育て方が悪い」
「帰ってきて何言ってんの、このわがまま自由人は」
『……??お、おかしいな。元就さん、機嫌良さそうでしたのに』
「ふん。我が無防備に寝顔を晒したというのに、口づけをせぬとは……夢子め」
『えぇ?!』
「おいこら、理不尽男。あんた、ちょっとこっちこい」
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