元親さんとデート! 「……やっぱ海はいいもんだ。世界や時代は違っても、海は変わんねえ」
『ふふ、本当に元親さん、幸せそうですね』
波間を眺めていた元親さんに相槌を打てば、彼は私を見て目を細められた。
「あぁ。……だが、やっぱすげーな。こんなバカでかい船が幾つもあんだろう?」
そして、船内を見回される。
緩やかなクラシックの音楽が流れてきていた。
私と元親さんが乗っているこの船は、所謂遊覧船。
ランチがついていて、船内で食事を楽しんだ後、サンセットを眺めながら陸に帰るというもの。
海が好きな元親さんには、喜んでもらえるかと思って……
「……だが、まなーってのは難しいな」
『うぅ、堅苦しい場所を選んでしまって、申し訳ありません……』
そうなんです。
ランチといえど、この遊覧船は少しばかり高級なもので……
家でスプーンやフォークを使うことも四苦八苦されたというのに、皆さんにとって、テーブルマナーほど苦痛なものはないでしょう。
さらに、ドレスコードもラフな格好が好きな元親さんには、少々……いえ、だいぶ窮屈なご様子で……。
『……はぁ』
つくづく、私の配慮のなさには呆れるばかりです。
これでは、元親さんに楽しんでもらうことすら難しいのでは。
「……あー、気にすんなよ、夢子」
ぽつりと漏らされたセリフに顔を上げれば、元親さんが優しい表情をされていました。
「どんな場所だろうが、こうやって夢子を独り占めできてるっつーのが、俺は嬉しいんだ」
『……元親さんっ』
一気に顔中に熱が集まる。
なんて、カッコいいセリフを口にされるのでしょう?!
キュンとしてしまいます。
『……あぅ、元親さん、あまりそういうことを口にされると、惚れてしまいそうです』
「あ?」
小さく呟いてから、顔を俯かせました。
もうまともに元親さんのお顔が見れません。
「……惚れちまえよ、俺に」
色鮮やかな、遥か水平線に沈む太陽の光に目を奪われながら、私は視界の中の元親さんが、そう唇を動かされた気がして。
自分の自惚れた考えに、また真っ赤になってしまいました……。
「……ただいま」
『……た、ただいま、です』
「……え、何この空気。初すぎるっ甘過ぎるっ、ちょ、空気に当てられて砂糖とか吐きそうなんだけどっ」
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