光秀さんとデート!

――オペラ座の怪人を観たのは、これで二回目。

前は小さい頃に父に連れてきてもらって……

怪人を酷く恐ろしいものだと思ったのを覚えていました。


でも再び観た今日は、悲しくて……その生に、ぐっと詰まるものを感じます。



不意に視線を感じて顔を上げれば、隣を歩いていた光秀さんと目があった。

「……物思いに耽っていたようですね」

『あ、はい。少し怪人の幸せを考えていて……』

私がそう言うと、光秀さんは酷く悲しそうな顔をされる。

まるで苦痛に堪えているような、そんな歪んだ表情を。

「……ですが、怪人の欲が叶えば、あの恋人たちは結ばれない。幸せになる結末が消えてしまうのですよ」

『……えぇ、そう、ですね。決して三人ともが幸せになる結末は……』

「ありえない。……そこに愛があればなおさら」

キッパリと言い放たれたそのセリフは、すごく冷酷な言葉の羅列のように感じた。

どこか、光秀さんの表情もさらに強ばっていて、厳しい。



「……行きましょう、仔羊」

長い沈黙の後、光秀さんは困ったような笑みを浮かべられてから、私の肩を抱き寄せられる。

光秀さんの体温は低いけれど、身体ごとくっつけば、流れる血潮を感じた。


「……菊一から与えられた予算はまだオーバーしていませんからね。食事でもして帰りましょうか」

それからクツリといつものように独特な笑い方をされて。

「夢子が望むなら、休憩や一泊でもいいですけどね……」

『え?…………っ!み、光秀さっ、早く抜けましょう、この路地っ』

「……おや、残念」

どこでそういう知識を手に入れられたのかわかりませんが、いつの間にか私と光秀さんは、所謂ラブホテルが立ち並ぶ路地にいて、派手な建物の一つを指さされた私は慌てて逃げるように駆け出しました。

うぅ、真面目な話はどこにいったんでしょう……っ!








『ぜぇはぁ、菊ちゃん……』

「ど、どうしたんですか?!お嬢っ?!」

『……は、しり、過ぎ、ましたっ』

「フハハ、仔羊は照れ屋なんですから」

「……変態、あんたホントお嬢に近づかないでくれる?」


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