海で遊ぼう・四天宝寺編

「なぁなぁー!!バーベキューしよーやー!」

そんな明るい声が砂浜の上に響いた。
後ろを振り返ったら、四天宝寺の皆さんがバーベキューセット(折り畳みテーブルやら椅子やらコンロやらクーラーボックスやら)をそれぞれ抱えながら歩いて来ている。

別荘から出てくるのに時間がかかったのは、このセットを持ち出していたからかななんて考えた。

「……はぁ。重っ」

ガタンっと小さめのクーラーボックスを砂の上に乱暴において、光くんが私に向かってそう吐き出す。

「何が入ってるの?」

「ジュースとか」

「見た目は石田さんが担いでるクーラーボックスの方が重そうだよね」

「あっちは肉とか野菜とか入っとる」

光くんが少しムッとした様な顔をして私の頬にクーラーボックスから取り出したキンキンに冷えたペットボトルをあててきたので「ぎゃ!」なんて色気のない悲鳴を上げた。
意地悪そうに目を細めた光くんを見つめる。

「何夢野さんに意地悪しとんねん。大丈夫か?」

謙也さんが優しく笑いかけてくださって、ちょっとドキリとした。……く、くそう。
謙也さんはちょっと色々ダメなのだ。反則だと思う。

裕太くんの麦わら帽子を深く被って誤魔化した。

「……いやでも水着……可愛ええな」
「真っ赤な顔で言うとか謙也さんキモイっすわ」
「なんでやねん!!自分も赤い気がするんやけどなっちゅー話やでっ」

そんな二人のやり取りに恥ずかしくなっていたら、ニヨニヨと小春お姉様が笑っていることに気づく。

「こ、小春お姉様……?」

「うふふ。ええやないの、その水着!可愛ええわぁ!なぁ、ユウくん、そう思うやんねっ」

「え、あ?……まぁ……普通に……その、ええんちゃうか」

ユウジさんにまで褒められて、思わず顔面から火が出そうになった。
いや褒められたかはギリギリだが、言葉の棘のなさが嬉しいというか。

「うんっ!ねーちゃん、可愛ええで!」
「そやな、似合ってる思うで」
「ワシもそう思う」

大きい声で金ちゃんが褒めてくれて、そのまま小石川さんと石田さんにも褒められた。
三人ともバーベキューの準備をしながら、私に顔を向けてくださって笑顔でそう言ってくださったから、本当にありがとうございますだ。

「……はぁー、そぎゃん胸あったとね」

「千歳さん!セクハラですっ」

光くんのクーラーボックスの中から適当に拾い上げたペットボトルで千歳さんの大きな背中を叩く。

それからじっと白石さんが私を見ていることに気づいて、ちょっと動きを止めてしまった。

な、なんだろう。
何か嫌な予感しかしない。

水着の上に軽いパーカーを着用しているだけの男性陣に囲まれつつ、そんな露出度の高い格好でイケメンの白石さんを見つめた。

「……えっと」

「あ、すまん」

「……あの?」

首を傾げる。
やはりジワジワと先程の嫌な予感が大きくなっていく気がした。

「いや……夢野さん、ほんまにエクスタシーな格好やなぁって思うて……」

エクスタシーな格好、とは。

頬を赤らめつつ、咳払いまでしたセリフがそれである。

やはり白石さんはカッコイイのに何かが違うなと後退りながら「バーベキューするなら、比嘉の皆さんも呼んできますねっ」と言って逃げることにした。

「比嘉の連中なら、あっちで海に潜ってたぜ」

そう言ってくれた跡部様にぺこりと頭を下げてから、指さされた方向へと走る。

途中、若くんや深司くん、十次くんが物言いたげな顔をしていたけど、ちょっと気にせず歩を進めるのだった。

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