海で遊ぼう・ルドルフ編
「……赤澤。さっき柳沢くんと遊んでいたホースを貸してください」
「ん?これのことか?」
そんな声が聞こえてきたと同時にビシャァァっと私に向かって勢いよく放水された。
跳ね返った水で幸村さんが濡れてしまうのではと思いつつ、それよりもめっちゃ顔面に直撃してるんですけどもっ!
「みゃばふっ」
「あはは、なんて言ってるか分かりませんが。どうやら胸元の砂は落とせたようですね」
ニコニコと微笑んでいる観月さんの方向を眺めたら、麦わら帽子が似合うルドルフの皆さんがいて。
柳沢さんと赤澤アニキと野村さんがびしょ濡れだった。
たぶんホースで水の掛け合いっこでもしていたのかもしれない。
「観月さん、ありがとうございます」
「んふっ、礼には及びませんよ。ですが、こちらへいらっしゃい。背中などにもついてるみたいですから、洗って差し上げましょう」
「はーい」
移動して髪の毛を弄っている観月さんのそばに行ったら、命令された赤澤アニキが私にまた放水する。
「あばばば」
「夢野、贅肉って揺れるだーね」
「柳沢さん、焼き鳥にしていいですか」
「クスクス、北京ダックってとこかな……」
「夢野っ、淳っ!!」
余計なこと言う柳沢さんに怒ったら、淳さんが一緒になって柳沢さんをからかってくれた。
それから、赤澤アニキにもお礼を言って、一郎くんが差し出してくれたタオルで水を拭う。
「……ねね、一郎くん」
「え?」
「裕太くんが固まってしまってるんだけど」
「あ、あー……裕太っ!」
「……はっ!」
一郎くんに首を傾げて、呆然と炎天下の下突っ立っている裕太くんのことを尋ねたら、苦笑しながら裕太くんの意識を戻してくれた。
「裕太くん、大丈夫?」
「え、あ、う、うん。お、俺は大丈夫だけど……」
視線を右往左往させている裕太くんは、まったく目が合わない。
一郎くんが後ろでため息をついていた。
「裕太くん!」
「は、はいっ」
「……ふふっ、なんでそんな緊張してるの?」
裕太くんの様子がだんだんとおかしくなってきて、私はつい笑ってしまう。
裕太くんはやっと私を真っ直ぐに見つめて、ちょっと拗ねたような表情をしていた。
「……緊張なんてしてない。ただ、……お前の格好が……直視出来なくて……そのっ、似合ってるけど……俺には刺激が強いというか」
言い切った時には裕太くんは被っていた麦わら帽子で顔を隠す。
「……そ、そんなに露出ないと思うんだけどなぁ……お目汚しすみません」
「い、いや、そうじゃなくて…………可愛いから」
なんだかだんだんと熱を帯びてくる頬に手を当てながら、私は裕太くんの足元を見つめた。
「…………俺、頭冷やしてくるっ」
パスっと裕太くんが被っていた麦わら帽子を私の頭に被せて、そのまま海に向かって走っていって飛び込んで。
その様子を麦わらの隙間から見て、少しだけ唇の端を上げた。
ほんのりと火照った身体は、眩しいほどの太陽の日射しのせいだろうか。
それだけじゃないことは、わかっていた。
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