海で遊ぼう・六角編

水着に着替えはしたものの、ちょっとさっきの忍足先輩のこともあって恥ずかしかったので、長袖の白っぽいラッシュガードを上から着ることにした。
きちんとファスナーも胸元上までしめて。

それから海に出たら、六角の皆さんが既にそこに居る。

白い砂浜の上をビーチサンダルでサクサクと歩いて、皆さんに近づいてみた。


「あ、夢野さんっ!」

葵くんの嬉しそうな声と満面の笑みで手を振られて、ちょっと幸せな気分になる。

「葵くん、皆さん、何してるんですか?」

首を傾げたら、葵くんがうーんっと腕を組んだ。

「ここの砂浜、すごく綺麗じゃないですか」

「うん」

「そして、景色も秘境って感じじゃないですか」

「うん」

「だからサエさんがインスピレーションを感じてしまったらしく……」

その返答を聞いてから佐伯さんの方を見たら、シャベルとスコップを使いこなしながら、何やら巨大な城を作り始めていた。

バネさんと首藤さんがせっせと海水を運んでは、樹さんとダビデくんが何やら砂と海水を混ぜ合わせている。
その二人の前に亮さんが三角座りして見守っていたから、そっと近づいてみた。

「これは……」

「サエが納得する配合の土を作ってる」

だろうか?とは思っていたが、さらりと答えられてしまうとちょっと笑ってしまった。

「砂地でスナッチ……ぷっ」
「ダビデっ!!」

バシャっとバネさんが蹴りあげた海水がダビデくんと樹さんにかかる。

「……バ〜ネ〜、酷いのね〜っ!」
「うわっ、すまん!!いっちゃんを狙ったわけじゃなくて!」
「問答無用なのね〜!!」

バシャバシャバシャバシャーっと、樹さんが鼻息荒くかけた海水は、バネさんだけでなく首藤さんも掛かってしまって、またそこから海水掛け合戦みたいになった。
亮さんもそれには参加して、走ってやってきた葵くんも参戦する。

「わっ!」

私もついにびしょ濡れになってしまったのだけど、その時に砂の城を完成させた佐伯さんが、びしょ濡れの私たちに爽やかに振り返った。

「出来たよ!皆!……って、俺抜きで遊んでるなんてずるいなぁ」

「サエを抜いて遊んだわけではないのね〜」

樹さんが濡れた髪をかきあげてから、佐伯さんの作った大きな砂の城に拍手をする。

「……って」
「え?」

隣にいた亮さんが私を見て真っ赤になってしまった。ぐっと帽子を深くかぶり直しながら「……透けてる」と呟いて。

「あ、あー!でも、これ、ほら水着なんで」

「そ、それはわかってますけど……夢野さん、今回は……その、ビキニタイプなんですね!」

「え、あ……」

改めて言われると途端に恥ずかしくなって。
さらに白だと中の水着がはっきり分かるのかと、白のラッシュガードを勧めてきたタマちゃんに頭の中で「ぐぬぅっ!」と唸ってしまった。

「はは、傷のことを気にせず、そういうのが着られるようになって良かったな!」

ガシガシっとバネさんに頭を撫でられて、ちょっとだけ安堵する。
笑顔が眩しくて、やっぱりバネさんは優しいなぁなんて思った。

「うん、それで……これは脱がしちゃダメなのかな?」

気付いたら佐伯さんが目の前で。
私のラッシュガードのファスナーに手を添えていた。

「え、あのっ」

あまりの王子様スマイルに油断していたが、脱がされるのもこの状況でラッシュガードを脱ぐのも恥ずかし過ぎる……!

「「サエっ!」さんっ!」

皆さんが佐伯さんの腕を掴まえて私から引き離してくださって。
その後「ビキニが三割引に……ぷっ」とダジャレを呟いたダビデくんにバネさんが飛び蹴りをしていたのだった。

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