海で遊ぼう・山吹編

六角の皆さんから離れて、木陰でラッシュガードを脱いでみた。
キョロキョロ辺りを見回したけど、誰もいなかったし。
濡れてしまって、もう体型すらわかるようにびっしりと肌にくっついてしまった上で、中の水着の形も分かってしまうのだから着てても脱いでいてもいいような気がした。

それに傷を隠すのをやめて、思いっきったデザイン(といっても、ちーちゃんのようなセクシーなビキニではなくて、ふわふわのレースがついたもので、思ったよりは露出が少ないはずで。下はそれに合わせたボトムス)にしたのだから、せっかくなら可愛いとか似合ってるとか褒められてもバチが当たらないのでは。
いや、ダメだ。ごめんなさい。想像しただけで恥ずかしい。普通に忍足先輩とか千石さんとか言ってくれそうだけど、脳内のお二人だけで砂糖を口から大量に吐いてしまいそうだ。

だから、中途半端にラッシュガードを羽織る形で木陰から出ることにした。

「……え、詩織」

そうしたら、十次くんにバッタリする。
半袖のラッシュガードとそれに合わせた水着と新しいサングラスが十次くんっぽくて「十次くん、カッコイイ」と声を上げたら照れるように顔を背けられた。

「あ、ありがと……いや、詩織も可愛──」
「ん?」
「──いいけど、閉めて!」

バッと十次くんの手が私のラッシュガードのファスナーを上にあげる。
さっき下ろしたところなのに……そんなに傷が痛々しかったかな?とつい口から出てしまったらしい。

「ち、違う!その、……お、俺以外が見るのが、その、耐えられない……んだけど……」

十次くんの台詞がどんどん小声になって消えて行く。

「十次くん?」

顔を覗き込んだら「うわぁっ」て悲鳴をあげられて若干ショックだ。

「ぷ、くくくっ、やぁやぁ室町くん!それじゃあ詩織ちゃんが可哀想だよー」
「うわ、千石さんっ」
「俺らもいるぞー室町ー」
「地味だからって見えてないことはないだろー」
「いや……もしかしたら見えてないかもよ」
「新渡米さん、それ言うと部長と副部長泣きますよ」

千石さんの後ろには南さんと東方さん、新渡米さん一馬くんもいた。
それからその後ろに壇くんと、彼に引っ張られている仁さんがいる。

「ダダダーン!夢野さんですっ!かき氷食べませんか?」
「けっ……太一、お前の分減るぞ」

一口すくって私に向かってイチゴのかき氷を差し出してくれた壇くんが可愛かったのだが、今の仁さんのセリフはどういう意味なのだろうか。
壇くんから一口あーんしてもらったかき氷を口の中で溶かしながら、仁さんの発言について考えた。
私がめっちゃ食べてしまうとか思ってるのかな。と思って悔しかったので仁さんの脇腹を擽ってみる。

「……ア?てめぇ……何してんだ」
「あー、そんな気がしてましたけどもっ」

くそう、ノーダメージだ!
むうっと唇を尖らせていたら、千石さんがニコニコと私を見ている。

「可愛いね、水着」
「へうっ」

目を細めてちょっとだけ首を傾げた角度から放たれた千石さんの褒め言葉は、脳内の千石さんより威力があって思わず変な声が出てしまった。

「あ、ありがとうございます……っ」
「うん!ラッキー!ってね」
「っ!千石さんっ」

チュッと私の額に口付けを落とした千石さんを引っペがすように十次くんが腕を掴んでいたから、私はそろりと皆さんから離れることにしたのだった。
決して、千石さんの褒め言葉にときめいたからではない……はず。

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