切原赤也に

「赤也くん、赤也くん、こっち!」

「え、あ、おいっ夢野」

グイグイっと赤也くんを引っ張って、人気のない場所に連れ込んだ。
ちょっと赤也くんの狼狽え方がすごくて、私が今から赤也くんに破廉恥なことをしでかすとでも思われているんだろうかと眉間に皺が寄る。

「……罰ゲーム、変顔撮るんでしょ?」

むぅっと頬を膨らませて、目をぱちぱちさせてこっちを見ている赤也くんの胸をトンっと叩いた。

「言っとくけど、絶対他の人に見せちゃダメだよ?出来ればすぐに消してもらって構わないのだけどもっむしろ消して!欲しい!切実にっ」

またトントンっと叩く。
赤也くんはその私の手首を掴んで「……へーへー。誰にも見せなきゃいいんだろ?」と目を細めた。

赤也くんの癖にっ、色っぽい表情をするんじゃない!!

「え、今の色っぽかった……のか?」
「ぎゃー!通常運転の私のバカっ!」

とりあえずまた口から漏らしてしまった自分自身を罵倒しながら、泣きそうになりつつ、変顔……変顔と唸る。

「お、変な顔」
「まだしてないんですけどもっ!心外っ」

悩んでいる顔を変顔と言われて写真撮られて、眉間に皺を寄せたまま叫んだら、また赤也くんが吹き出しながらシャッター音を鳴らした。

お、おのれ……っ!

「赤也くんのバカ!赤也くんのアホっ!」

唇を尖らせてそう言ってから、思いっきり頬を膨らませて目を逸らす。

「ぷ、あはっ、はははっ!夢野っお前、マジ変な顔っ」

そう笑いながら私の写真を撮った赤也くんに「そんなに撮ったらもう罰ゲーム終わりでいいよね?!」と叫んだ。

「あー……だなー!」

なんて言いながら、赤也くんが翳していたスマホを少し下げる。でもピタリとそれが途中で止まって。

「……忘れてた」

──チュ……

頬に赤也くんの唇が軽く触れる。
目を見開いて赤也くんの顔をマジマジと見つめたら、パシャリと写真を撮られたのと同時に赤也くんが悪戯っ子のような可愛い笑顔で私に目を細めた。
白い歯が見えて、ちょっとだけ子供っぽいのに、少し赤らんだ頬が妙に色っぽい。

「へへっ!今のが一番可愛──いや面白い変顔だったぜ!」

頬に残った感触に呆然としていた私は、そのセリフに「もぉーっ!!」とまた赤也くんの胸元をバシバシ叩いて抗議する。

「絶対ぜーったいにっ!他の人に見せちゃダメだからねっ!!」

「わかってるって!大体見せるわけねぇーじゃん……こんなアンタの可愛い顔……」

「……んな?!」

「……バーカ」

ピシッとデコピンされた。
自身のスマホにチュッてした赤也くんの表情がまた小悪魔みたいな感じになってて酷く焦る。
そして私はまた彼の胸元をバシバシと叩くしかなかったのだった。

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