巨木の乙女

でかいのとの出会い (6/12)

昼に中庭の木の上に登って、購買で買ったパンを食べ終わった頃だ。
あぁ女子の制服可愛いな、女子もレベル高ぇ。うおー、あそこにいるのは三年の先輩方!真ん中の子、いい!!などと、安全に目を養っていたわけだが、そんな時「……龍にも、本当は謝りたい……」と落ち込んでいるような声が聞こえた。

あ、真下か。
俺のいる木の下で、女子が一人お弁当箱を広げていた。
その中身を見て驚愕する。
めっちゃくちゃうまそうだった。
すごく凝っているのは見たらわかるし、手間隙かかってるんだろうなと俺でもわかる。
だけど、さらに驚いたのはそれにいっさい箸をつけずに片付けようとした瞬間だった。

「なぁなぁお前!それ食わないのか?!」

ずざぁっと、乗っていた木の枝から一回転したあと地面に着地して顔をあげる。

それから上にいたときには気付かなかったソイツの容姿にそのまま固まる。

昔、仲の良かった女の子が見ていた絵本に出てきた王子まんまの美形がそこにいた。
思わず開いた口がふさがらない。

「な、なに?」

「はっ!……あ、だから!それ、食べないなら俺が食べていいか?!」

「な……」

「つか、そんなに手間のかかったお弁当を食べないなんてバチが当たるぞ!人として感謝の心は持つべきだ!」

食べ物にも、野菜を育てた農家の人にも、もちろん作ってくれた人にも!

俺が力説すると、美形な女子は大きな目をぱちぱちさせてから、へらっと笑った。
……あ、今の表情は可愛い。

「そうだな。農家の人にも、この子達にも悪いなっ」

ごめんね、にんじんちゃん、ほうれん草くんとお弁当箱に向かって話しかけた彼女に今度は俺が目をぱちぱちさせた。
見かけはもっとクールというか、冷静沈着な感じがした。
でも、どうやらそれは真逆のようだ。
ふふっとはにかみながらお弁当のおかずを口に入れる彼女は、小さな女の子のようで。

「……お前――」

ぐぅぎゅるー……
無情にも鳴り響いたのは俺の腹だ。

「……私なんかが作ったやつでよかったら、食べるか?えっと……」

「食べる!!てかお前が作ったのか!すげえな!あ、俺は千鳥山中出身一年三組、西谷夕だ!」

「西谷か。私は一年一組深井ユメだ。よろしく……あ、座ったままでは失礼だな、よっと……改めてよろしく」

右手を差し出して俺の前に立った深井はでかかった。
見上げることになってしまうこの身長差に、塩辛い涙が込み上げてくる。

「ど、どうした?!」

「な、なんでもないっ!!気にするな!それより食べようぜっ」


深井の第一印象は、色々反則な女子。
これに尽きる。
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