巨木の乙女

なんということだっ! (5/12)

私は今日こそはっと、自分で作ったお弁当を握り締め、勇気を出して女子グループに混じらせてもらおうとした。

だがしかし問題が発生した。

「やだ、もうお母さんったら!こんなキャラ弁を作るなんて!」

「あはは、すごいすごい!いいじゃん!可愛いじゃん!!」

「もう!他人事だと思って!こんな年になってまでキャラ弁だなんて!恥ずかしいよ!」

「…………」

な、なんだと?!
き、キャラ弁って恥ずかしいものだったのか?!
え、あれ、おかしい!
きゃー、かわいい!とかなって、めでたく華の女子生徒のグループ入りになれる素敵アイテムじゃなかったのか?!
私は、私は……選択肢を間違えてしまった!

「……あれ?深井さん?」

「あ、もしかして一緒に食べる?!」

近づいた私に気付いてくれたクラスメイトの女子たちに気付かれぬよう、さっとお弁当箱の包みを隠す。
朝五時半から起きて一生懸命作ったメルヘンなキャラ弁当作戦は失敗した。
このまま、このお弁当を出せば、私はきっとクラスでもっと浮いた存在になってしまう。むしろ、無理して女の子らしくしようとしてんじゃないのとか思われてしまうかもしれない。

「……い、いや。すまない。今日は気分が悪くて、ま、また今度、ご一緒させてくれないか」

「そうなの?残念……。気分は大丈夫?保健室ついていこうか?」

「いや、中庭で……少し休んでくるから」

大丈夫、とできる限り怪しまれないように笑顔を浮かべた。
若干引きつってしまって、困り顔みたいな微妙なものになってしまった気もしないでもないが、今はこの場を無事に切り抜けなければならない。

嘘をついた私に優しい言葉をかけてくれるクラスメイトに、これぞ女の子……!と涙が出そうになる。

私は怪しまれぬよう、そっと教室を後にした。





中庭でも誰もいない木の下を選ぶ。
そしてそこでそっとお弁当を広げた。

何が空しくて孤独に自身で作ったキャラ弁を頬張らなければならないのだろうか。

むしろなんの因果であの龍と同じクラスなのだ。
ヤツが絡んでくるせいで他のクラスメイト(特に女子)と話す機会を失ってしまった。
いや、何も彼だけのせいではないのはわかっている。
大半は私の勇気が足りないせいだ。

「……龍にも、本当は謝りたい……」

動揺したとはいえ、入学式に男の大切な場所を危うく破壊してしまいそうになって申し訳なかったと。
そして無視みたいなことをしている自分を許してくれと。

はぁ、とため息をついたら、キャラ弁を食べる気分ではなくなった。
勿体ないが今は食欲がない。

そう手付かずのお弁当に蓋をしようとした時だった。

「なぁなぁお前!それ食わないのか?!」

木の上から小柄な男の子が降ってきた。
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