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「滝先輩、ご実家、華道家元なんですか!」
セレブですねっ!と叫んだら「いやいやうちの学校の生徒はほとんどそんなもんでしょ」とにこやかに答えられた。
「あ。景吾くんは特別だけど」
「それは知ってますよー」
跡部様みたいな人が二人以上いてたまるか!と吐き出したい気持ちだったけど、精一杯我慢した。
それから、今日私は鼻血を出すかもしれない。
滝先輩のお家に深司くんと若くんとお呼ばれしたのだ。
着物着用と言われた時は着物を一人で着れる中学生は存在しない!と心の底から叫んだものだが、今は滝先輩にアンティークな小物をプレゼントしたい気持ちにかられる。
「ふ、ふふふへ、ふへへ」
「おい、気持ち悪いぞ」
「……日吉に同意したくないんだけど、でも確かに笑い方気持ち悪かったよ。てか、華道家元の息子の前で特技華道とか言えないじゃん……馬鹿なの?」
若くんと深司くんも着物なのだ!!
深司くんは本人が言った通り、華道が特技らしいから一緒に来たのだけど、若くんはなんとなく!そう、なんとなく!着物姿が見たかったわけでは断じてない!!いや嘘です、見たかっただけです!ふへへへへ
ニヤニヤしていたら、着物着た美しい滝先輩ににこやかに頬を抓られた。
それから、若くんと深司くんも交代で私の頬肉をいじめてくる。
めちゃくちゃ痛かったけど、三人の着物姿が本当に超似合ってて、三人ともすごく美人だったから、心の底から許すっ!ってなった一日だった。
(……馬鹿なことばかり言うから、着物のこと褒めれなかった……クソ)
(あーあ……、家元の息子とか、華道できるなんて深司くんかっこいいとか言われる未来が消えたってことじゃん。ほんと、嫌になるなぁ)
(ふふ、本当に飽きない子だなぁ……)
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