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「跡部がお菓子大量に部室に置いてんのやけど、食べに来る?」
「お菓子……!い、いきますっ」
中庭で一人ヴァイオリン練習をしていたら、忍足先輩がふらっとやって来て、部室に誘われた。
跡部様のお菓子となると、きっととても美味しいに違いない。
「お、なんだやっぱコイツを探しにいってたのかよ」
部室に着いたら岳人先輩がいて、よっと肩を叩かれる。だからお返しに頭をなでなでしたら怒られた。
「あ、侑士ー!俺にもお茶入れてくれ」
「なんでやねん」
「いいじゃん!侑士のいれてくれた緑茶うめぇんだもん」
「男に褒められても嬉しないわ」
「クソクソ侑士!いれてくれよー!」
「わかったわかった、ギャアギャア騒ぐんやない」
「あ、私もお願いします侑士先輩」
岳人先輩と忍足先輩のやり取りを微笑ましく、仲良いなぁなんて思いながらお菓子を口に放り込んだ。
それからハッとして手を止める。
「……っ……」
「……なんて?」
今岳人先輩のセリフを聞きすぎて、言い慣れていない呼び方をしてしまったような。
どうやら当事者もそう思ったらしく、首を傾げて私にもう一度と催促してる。
「……忍足先輩、私もお茶をお願いします」
気を取り直して真顔で返したら、忍足先輩が緑茶をお盆に乗せながら真後ろに立っていたから、びっくりして噎せてしまう。
「……大丈夫か?ほらお茶飲んだ方がええで」
「っ、あり、が……」
手を伸ばしたらヒョイっと湯のみが逃げる。
訝しげに見たら忍足先輩が目を細めて、色っぽい顔で私を見てた。
「……忍足先ぱ──」
「んー……」
それちゃうなぁ。みたいな顔されて、なんだか顔面が熱くなる。
「……侑士先輩の意地悪っ」
頬を膨らませてそう言ったら忍足先輩の綺麗な顔が間近に迫ってきたから大変驚いた。
「「わーっ!」」
唇奪われるって仰け反りながら叫んだら、同時に叫んだ岳人先輩が忍足先輩を思いっきりカステラの詰まった包装箱で殴る。
ガスッッと音がとても痛そうだった。
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