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「跡部様跡部様、お誕生日おめでとうございます!」
「アーン?なんだ、わざわざそれを言いにきやがったのか?」
「いつもお世話になってますので」
ぺこりと頭を下げてから顔を上げたら、跡部様がすごく柔らかな笑顔を浮かべていたので、思わず三度見くらいした。
「……ふ、おいお前。腹減ってるんじゃねぇの?」
「え、どうだろう」
「まぁどっちでもいい。今日の放課後はテニス部に来いよ。ジローや向日も来るだろうしな」
「え?」
ポンポンと頭を軽く叩かれた。
一体何の話かわからない。
首を傾げていたら、後ろから誰かが突撃してきた。ぐえっと変な声がでる。
「跡部の誕生日は、たくさんプレゼントが届くC〜。食べきれないからって、いつも俺たちにわけてくれるんだよー」
「…………さ、さすが跡部様」
廊下の向こうに去っていった跡部様がいろんな人に頭を下げられたり、プレゼントを渡されている姿を見ながら、小さくため息を吐き出した。
「……んー?あっれー?それって跡部にー?」
「ジロー先輩、何も見なかったことにしてください!」
首を傾げたジロー先輩に大声でいってから、廊下をダッシュする。
渡しそびれたプレゼントは、手の中で包装紙がくしゃくしゃになった。
跡部様に手作り菓子などと恐れ多かったのだ。
はぁっと吐き出した息はなにやら重かった。
「ねぇねぇ、跡部ー。ダメだよー、ちゃんと気付かなきゃー」
「アーン?……言っとくが俺様は一応気を使ったんだぞ。アイツがあそこでは渡しにくそうだったからな」
「そっかー。それならEーんだけどさー」
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