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「謙也さん!」
「ど、どどどどないししたん?!」
「……なんというか、謙也さんがどうしたんですかと聞きたくなるぐらいですが」
苦笑してから、彼女は後ろ手に隠し持っていた猫耳カチューシャを俺に見せてきた。
「……」
「……」
短い沈黙に堪えきれず「え?」と声を出して、マジマジと彼女を凝視する。……あかん、反則的なぐらい可愛い。
「こちらをつけて欲し……え、ちょ、謙也さん?」
「……なぁ、つけてもえぇから……その後は俺の言うこと聞いてくれるか?」
緊張と理性と、なんや色々なもんがごちゃ混ぜになって、俺はぐっと彼女の肩を掴みながら顔を近付けていた。
「う、うわぁ!ごめんなさいっごめんなさいっ謙也さんなら、からかえるんじゃと思った私が浅はかでしたぁーっ」
「…………え?」
涙目になりながら、俺を振り払って逃げていった彼女を呆然と見送った。
それからすぐにさっきまでの至近距離を思い出して、呼吸困難に陥るぐらい心臓がばくばくし始めたのだった。
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