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「深司くん深司くん」
「早口で何言ってるかわかんないんだけど……で、何?」
「聞こえてるじゃないか!」
彼女は叫んでいたけど、無視して「……だから、何?」と続けた。
「……うぅ。……えぇっとお願いがあるのですっ。さぁこれをつけてくれたまえ!」
じゃじゃーん!と擬音まで口にしながら近付いてきた彼女に、若干引く。
するとまた嘆くんだけど、その手に持っている安っぽい猫耳カチューシャは絶対に離さなかった。
どうやら俺につけろということらしいけど、なんでつけさせたいのか意味が分からない。
「……大体、なんで男に猫耳なわけ?……男をペットとして飼い慣らしたい願望でもあるのか?……あぁ、だとしても俺はごめんなんだけど……っていうか、そもそも俺なんかにつけても何の得にもならないし……あーぁ、なんか憂鬱だよなぁ。もしかして馬鹿にされてる?」
「あぁああの、参りました……っ」
…………別に勝負も何もしていたつもりないんだけど。
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