一欠片の興味
「ははっ、夢野のヤツ相変わらず変だなぁー!」

「……フシュー」

氷帝の猿山の大将……跡部さんだっけ。が、マイク片手に何を話し出すのかと思ったら、到着が遅れている大阪の学校とアイツのことだった。

このペンションに着いた時に見かけたアイツ。

俺と同い年か、まぁよくて一つ年上。

で、ソイツが氷帝の人たちと妙なテンションの漫才みたいな会話を繰り広げたら、桃先輩と海堂先輩が顔を見合わせていた。

「……桃先輩、知り合いッスか?」

「あぁ。つっても、俺より海堂の方が仲いいよな?なぁ、か・お・る・ちゃん」

「おい、桃城、てめぇっ?!ばっ、俺は……アイツが勝手にここ数日メールを送ってくるだけだ!」

意味深に笑った桃先輩に対して、海堂先輩が見たことがないぐらい顔を真っ赤にして照れた。

なんというか、これはこれで気味が悪い。

「……ほう。それは知らなかった。夢野詩織、元立海生。今は氷帝に通う、あの飛行機事故の唯一の生存者。……まさかうちに彼女と友人関係のやつがいるとは」

眼鏡を中指で押し上げながら、乾先輩がノートを広げた。

「……へぇ。彼女、奇跡の少女の夢野さんだったんだ」

「元気そうだね。ニュースで見た時は、同じ中学生として、複雑な心境だったんだけど……」

不二先輩に河村先輩がそう会話をしてくれたおかげで、父さんに聞いたイギリスから日本に向かう筈だった飛行機事故と話が繋がる。

「……ふぅん」

気付けば、結構な時間彼女を視線で追っていた。


「でもでも、けっこう可愛い子だにゃ〜」

「そうかもな……って、英二!何の話をしてるんだよ」

「にゃはは!大石が夢野さんを見つめていたからだよーん。……まぁおチビもだけど」

「別に見てないッス」

菊丸先輩の台詞に慌てて視線を外して、昼食の残りを口にする。

「…………」

その時、目の前の手塚部長の手が止まっていることに気付いた。

いつも無表情の手塚部長が、ほんの僅かに笑っている気がする。否、全然笑っていないんだけど。どうみても仏頂面なんだけどさ。

ただ、雰囲気が柔らかいというか……


「……ふむ。どうやら立海の一部の雰囲気が少し張り詰めているな。……あぁ、氷帝の芥川が夢野に抱き付いて、向日が夢野に無理矢理ケーキを食べさせているから、か。……これは面白いデータが取れそうだ」

「……、」

乾先輩。
横向いて下さい。

明らかに雰囲気がピリピリし始めたんスけど。


「…………ふぅん」

眉間に皺が寄った手塚部長から視線を外してから、こっそりもう一度アイツを見た。

ちょうど変な奇声を上げて、跡部さんに静かにしろと怒られていた。

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