放置できねぇ謎
──あのババア、呆れて物が言えねぇ。

けっと舌打ちしてから、斜め前を歩く夢野の後頭部を見る。
人が多くその後ろ頭がフラフラと行ったり来たりしていた。まったく不安定過ぎてチラチラ気になっちまうだろ。クソ!

……そう言えば、コイツ、誰か連れがいるとか言ってやがったな。一人はあの気の強くて面倒臭い女である三船らしいが……

「え!あの、私、一人じゃないので……っ!」

そんな声が前方から聞こえてきた。
はっと視線を前に向ければ、夢野が知らねぇ男二人に絡まれてやがる。

「……ちっ!」

めんどくせぇな、本当にコイツは。

クソババアの馬鹿な台詞が頭の中に過り、俺は夢野に絡んでいる男の一人の腕を掴んで捻り上げた。

「……俺のツレになんか用か?」

ギロリと睨んで低い声で吐き出せば、男たちは「ヒィっ!」と小さく情けない悲鳴を上げて去っていく。
それから真横に立っている夢野に視線を向けたら、ぽかんと間抜けな顔で俺を見上げていやがった。

「……はっ!あ、ありがとうございますっ、仁さんっ」

「別に。そうやって間抜けな顔でぼーっとしてるからカモにされんだよ」

「き、キリッて引き締めますっ!」

ギュッと唇を噛み締めて真面目な顔をし始めた夢野につい笑っちまった。はっと息を吐き出して頭に手を置く。

「んで。三船の野郎はどこだよ?あと、他にもいるとか言ってやがった──」
「夢野さんっ?!な、なんで亜久津くんがっ!」
「──あ?てめぇは四天宝寺の忍足……」

そう言えばここは大阪だったな。と思いつつ、忍足の視線が俺の手の位置を何度も確認してオロオロし始める。

「仁さんはたまたまお会いしたんですが、仁さんのお母様である優紀ちゃんから、仁さんを頼まれました!」
「誰も頼んでねぇよ!」
「なんやわからんけど、一緒に回るん?」
「いや俺は──」

まさか忍足だけということではないだろう。
だとすれば、四天宝寺が何人かいるかもしれねぇし。コイツらのノリは俺の性にあわない。

「はい!仁さんも一緒でお願いしますっ」
「──何勝手に言ってやがるっ」

俺が後頭部を叩いたら夢野は「え?!」って顔をした。

ちっ、クソ!
なんでそんな意外そうな顔しやがる。

「ねーちゃん、お帰りー!!って、あれ?なんか増えとるー!」
「増えとるって、亜久津くんやないか!」
「あら本当に。詩織ってば本当にテニス部ホイホイなんだから」

遠山の声が煩かったのと、白石の動揺した顔に先程の忍足と同じ空気を感じた。
それから三船はいつも通り腹が立つような笑いを浮かべやがったが、それよりもその格好に二度見した。いや夢野もそういえば変な格好してやがるが、それが三船となると少し驚く。

「はい、みんなー笑ってー」

それから四天宝寺レギュラー全員じゃねぇか!と心の中でつっこんだと同時に、汽車の前で夢野の友人──名前は知らねぇ──女に写真を撮られたのだった。

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