く、クーちゃん……!
流夏ちゃんと合わせて買った、ハリーポッターのローブとネクタイをフンフンと鼻歌を歌いながらパンダリュックの1番上に詰める。
後で皆が来る前にこっそり着用するのだ。
その為、四天宝寺の皆さんとの待ち合わせ時間よりも早くに流夏ちゃんと設定していた。
ちーちゃんは急遽参加してくれたので、合わせられなかったのが残念だが、致し方がない。
あ、もちろんネクタイに合うように上はブラウスにするつもりだ。

昨日から色んな人からメールやらメッセージやら届いたが、どうやら私が今大阪にいるのが広まっているらしく、何事もなく無事に帰って来れるようにと祈られた。
若干、幸村さんのメッセージには何か重いような別の意味が含まれているような気がしたが、深く考えるのは今は辞める。

「あ、そろそろ出なくちゃ……!」

忍足先輩から届いた「今から朝練やねん。ほな後でな」というメッセージに頑張ってくださいね!と返してからパンダリュックを背負って靴を履いた。

ホテルのカウンターでチェックアウトしてから、リュック以外の荷物を大阪駅の大きなロッカーに詰め込んだ。

「……ん?また??」

そしてそこで、先程の忍足先輩からのメッセージの違和感を口に出す。
確かに今日は夜に東京に帰るつもりだが、忍足先輩に会う予定とかはないはずだ。
首を捻ってから、また東京で会おうなとかそういうニュアンスかなと一人で納得した。



「詩織、こっち」

テーマパークの最寄り駅に着くと、オープン前のえらく早い時間だと言うのに人が沢山いる。
その中で、ハリー風眼鏡をかけて、すでにローブ着用の上ネクタイまでブラウスの上から締めている流夏ちゃんを発見した。

「やだハリー似合うっ」

興奮してしまう。
いつもスタイリッシュでクールな流夏ちゃんだが、好きな物の時にこうはっちゃけて可愛くなるの好きだ。

「まだヤツら来てないから、詩織もローブ羽織っときな」
「うんうんっ」

もう既にハリーポッター風な格好とかしている人も見かけたこともあり、恥ずかしげなくネクタイをつけてローブを羽織った。
……暑い。ちょっと待って、え、真夏にこの格好暑くない?

「あらあら、早めに三船さんと待ち合わせって、そういう事だったのね」

パシャパシャとシャッター音を鳴らしながら登場したのはちーちゃんだ。
うっすらと額に汗が滲んできた私を見てクスクスと笑いながら、冷たいペットボトルを頬っぺに当ててくれる。

「でも三船さんの意外な一面を見られて嬉しいわ」

「そういえば前から言おうと思ってたけど、流夏でいいよ。私も千早って呼ばせてもらうし」

「やだ嬉しい。ふふ、改めて。似合ってるわよ、流夏」

「ありがとう、千早」

……おうふ。
間に挟まれてなんだが。まるで美男美女の付き合いたての人達の会話みたいに見えるんじゃないだろうかと、そんなアホな考えが浮かぶ。
いやだって、ちーちゃんはもう大人っぽくて美人だし。流夏ちゃんもハリー風で余計に美少年度が増していて眩しかった。

「し、しもた!ユウくん、出遅れたみたいやわ!!」
「くっ、せやけど俺には小春が1番似合うとるで!」
「ユウくん……!」
「小春ぅ……!」

「あ、おはようございます。小春お姉様、一氏さん」

ミニオン風の格好をして小芝居しながら改札を通ってきたお二人に挨拶をする。取り敢えず本当はあまり声をかけたくなかったが、掛けなければ永遠と改札前で新喜劇が行われてしまいそうだった。

「おー、なんや久し振りやな」
「いややん、詩織ちゃん可愛ええな!元気しとった?って、三船ちゃんはメッチャかっこええやないのぉ☆」

一氏さんが私の頭をわしゃわしゃして撫でてくれる。いやでも髪が乱れる……!と顔を上げたら、隣で小春お姉様が流夏ちゃんにロックオンしているのに、一氏さんが白い歯を見せたまま私に笑ってくれてて、思わずぎょっとした。

「いいんですか?!いつものツッコミは」
「ん?あー……あれくらいは浮気にならんやろ」

三船やしな、とまた笑顔で頭をポンポンされる。
うーむ、今日の一氏さんはどこか大人だ。

「……あー……あと、自分似合っとるわ」

びっくりする。
今一氏さんが褒めてくれたのだろうか?
額に汗かきながらもローブ着ててよかった。

それからすぐに謙也さんがやって来て「スピードスターやなのに負けてまうとは、悔しいっちゅー話やで」と謎に悔しがって、時間ぴったりに白石さんが到着された。ほぼ同時に小石川さんが背中に金ちゃんを乗せて、隣には中学生の貫禄じゃない石田さんも一緒に歩いてくる。

「後は……財前と千歳か」
「いやクーちゃん!その前にウチをはよ紹介せなあかんやろっ」

白石さんが久し振りやなと笑いかけてくれて、改札を振り向いたと同時に謎の美少女が白石さんの背中を強く叩いた。

「あっれー?白石の妹やん!なんでここにおんのー?」

金ちゃんが眠そうな眼を擦りつつ、あっけらかんと笑う。

「へぇ妹連れとはね」
「うわぁツインテール可愛い、すごく白石さんに似てる……っ!美少女!」

ちーちゃんの頷きに思わず大声で叫んでしまった。まさか金ちゃんよりも大声になってしまうとは、興奮しすぎである。

「あ、夢野さん、ちゃうねんで?ただ、妹がここまで着いてきてもうただけで……」
「アンタが夢野さんなんや!ウチ、白石友香里ですっ!ちょっと、クーちゃんの新しい交友関係が気になってもうて……えへ、よろしゅうに!」

白石さんがしまったという顔をしたと同時にグイッと私の前に友香里ちゃんが身を乗り出してきた。短めのツインテールがぴょこぴょこ動きに合わせて揺れてて、もう本当に可愛らしい。

「新しい交友関係が気になったって……お前相変らずブラコンやなぁ」
「謙也くん煩いわ」

お兄ちゃんが大好きなんだなぁとほわほわしつつ、それよりもクーちゃん呼びに大変ニヤニヤしてしまった。こんな可愛い妹がいてクーちゃんだなんて呼ばれているだなんて、白石さんのイメージが頭の中で更新されていく。今までのエクスタシーという苦手意識が消えかかった。

しかし隣でブラコンと口にした謙也さんに友香里ちゃんが足を踏んだので我に返る。

「だ、大丈夫ですか、謙也さん!」

蹲った謙也さんに鼻息荒くフンっと仁王立ちした友香里ちゃん強すぎじゃないだろうか。

「だ、大丈夫やで!コイツいつも俺に対してこんなんやねん」
「きっと謙也さん話しかけやすし、好かれてるんですね!」

光くんも謙也さんに対して遠慮がないし、謙也さんは優しいから、年下の子達に好かれるんだろうなぁと微笑ましく思う。あ、私も年下だし、謙也さんのことはカッコイイ頼りがいのあるお兄さんだと思っているし、思春的なところが可愛いし優しいので好きだ。

「……え、ホンマに……?」

突然真っ赤な顔でキラキラし始めた謙也さんが嬉しそうに私を見つめている。
ん?と首を傾げてから流夏ちゃんに視線を向ければ、小さく溜息をつかれた。
あ、これまた口に出してたやつだ。は、恥ずかしい……!

「思春的なとか気になるニュアンスもあるけど、夢野さんに頼りにされてるのは、う、嬉しいわ」

ちょっと首を傾げながら満面の笑みを浮かべてくれた謙也さんの破壊力が半端ない。な、なんぞ、これ!く、くそう!これだから、イケメンさんは!!

「謙也さん、詩織に近付かんといてくれます?」
「すまん、遅うなったばい……」

あわあわしていたら光くんが私と謙也さんの間につかつかと入ってくる。
その隣では千歳さんが白石さんと小石川さんに謝っていた。

「……詩織、おはよう」
「お、はよう……!」

光くんに文句を言っている謙也さんの言葉が聞こえていたが、光くんは無視して私を真っ直ぐ見て挨拶してくる。
すっと細められた目が、私の心を見透かしているようで途端に落ち着かなくなった。



「……クーちゃん、ウチ友達んとこ遊びに行くけど」
「ん?あぁ、満足したんやな。良かった……」
「いやいやクーちゃんなんでそないボーッとしてんの?!やっぱ何か可笑しいと思ったんよ!気張らなあかんで?!わかっとんの?!」
「え、え?何を……」
「自信持ってやクーちゃん!こん中で一番かっこいいんはクーちゃんなんやから!!」
「え、あ……ありがとう、な……?」

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