大阪の地にて
「こんにちは!小石川さん、お久しぶりです!って、えええ?なんで光くんはいきなり、そんな不機嫌そうな顔なの?!」

新大阪駅に着いたら、光くんと小石川さんが迎えに来てくださっていた。
実は小石川さんに大阪観光の約束を果たしてもらうことになっていたのだが、そこに光くんも一緒に付いてきてくれることになっていたのだ。

「なんで室町なん」
「久しぶり……って、その、色々あって」

十次くんが苦笑いを浮かべながら、肩を竦める。
光くんは自分も後から着いてくることにしたのに、十次くんに厳しすぎると思う。

「ふっ、確かにそうやなー」

小石川さんが私に頷いて大笑いし始めた。いや、また口に出してしまったのかと頭を抱えるが、睨まれてる十次くんが可哀想なので、ここは声に出てて正解だと思う。

「副部長、後で覚えといてくださいよ。……まぁええわ。せっかく来たんやし……」
「財前怖いわ。っと、ほな、そろそろ移動しよか。まずは腹ごしらえやんな」
「ですねっ!!」

はぁっと溜息を吐いた光くんを横目に、小石川さんの意見に目を爛々と輝かせた。

「え、ちょ、もうお腹空いたのか?」

十次くんがビックリしているが、私が新幹線の中でお弁当を食べたのは2時間前である。お腹が空いていても不思議ではないのだ。

「十次くんはお腹空いてないの?」
「いや俺は……空いたかな」
「じゃあ問題ないねっ」

えへへと十次くんの両手を包んでブンブンっと上下に振った。仲間だよという念を送る。決して私が田仁志さん並の食いしん坊だからとかじゃない。

「詩織」

そんなことをしていたら、光くんに後頭部を叩かれた。軽くだったけど、ちょっと痛い。

「出発するんなら行くで。あー、副部長の奢りで食べれる昼食どこ連れて行ってくれるんやろー」

「ちょ、財前!いつ俺が奢ることに?!」

「そ、そうだよ!光くん!むしろ、ここは私が出すよっ!!普段は節約してるし、だから大丈夫だし!案内してもらったりするんだから、私が出す!っていうか出させてくださいっ」

慌てる小石川さんにサッと手を挙げて、昼食代は絶対私が払うという意思表示をする。大切な大会前の貴重な時間を私なんかのために割いてもらうのだ。昼食代だけでも支払わないと、ほんと悪すぎる。

榊おじさんからも多めに旅費のお小遣いをもらってしまっているので、この人数なら大丈夫なはず!

「……女の子に奢られるのは……」
「男としてどうやねんって話やけど」
「詩織は譲る気なさそうやから……しゃーないっすわ」

三人が微妙な顔して溜息を同時に吐き出したけど、私はそんな三人の背中をグイグイっと押す。

それから小石川さんが案内してくださったのは、大阪の街が見渡せるビルのレストラン街だった。

「夢野さんの分くらいは出そう思ってたから、ここにしたんやけど……」

小石川さんが申し訳なさそうにそう言っていたけど「大丈夫ですっ」って笑って返した。
それよりもこんなに眺めのいいオシャレな場所を探してくださるとは、小石川さんもなかなかやるなと思う。
きっと、小石川さんと付き合う人は幸せだろうなと感じた。


「……副部長に付き合う人がおったら、やけどな」
「財前、今日ほんま棘あり過ぎやろ」
「……俺は最初二人でここに来ようとしてたことに驚いてる、んですが……」
「む、室町くん!お、俺は特に深い意味はないんやで?!」

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