跡部景吾<お前は狩りにでも行ったのか、アーン?
長太郎<まぁまぁ、詩織ちゃんの言動がおかしいのはいつものことですから!
スマホの画面に表示される氷帝グループアプリのメッセージを眺めながら、長太郎はよく夢野のことを馬鹿にしているように見えるよなと思う。
でも別に馬鹿にしているわけではないところが長太郎らしい。
普通にそう思っているのを素直に口にしているだけなのだろう。
日吉若<結果はすぐに出るのか?
パンダ詩織<うん、帰る時には出てたよー!順位決める訳ではなくて、今回は一定のレベルに達しているかどうかみたいな感じだったのでー!
ジロー<じゃあじゃあ通過したってことー?
パンダ詩織<はいっ!もうバッチリですっ!
滝<おめでとー!やるねー!
長太郎<おめでとう!
ジロー<おめでとー!
樺地<ウス。おめでとうございます
岳人<うわ、画面見てない間に!クソクソおめでとう!良かったな!
侑士<おめでとうやで。あとで個別にメッセージも送っとくからな。
跡部景吾<よくやった。まぁわかっていたがな!
仲間たちからの祝いの言葉で溢れていく。
俺も早く何か打たねぇと……!
宍戸<おめでとうな!
日吉若<お前の練習量と技量なら当たり前だが、次も油断するなよ。
普通におめでとうな!と打ち込んで、その後すぐに若が送っているメッセージを見て苦笑した。
若のやつ、素直じゃねぇな。
もっと普通に祝ってやれよ。と思いつつ、たかが一言コメントするのに、かなりの時間を要してしまった俺には人のことを笑えないかもしれない。
個別にメッセージ送るって言ってる忍足のことも若干気になってしまうのはなんでだ。
いや……時間が経つほどに、そのなんでかなんてのは理解出来てきているんだ。
実を言うと……俺はおかしい。
おかしいと気付いたのは、夢野の家でタコパをした時からだ。
夢野のことは長太郎や若と同じく大切な後輩だと思っている。
そう、今まで気の置けない後輩ってのもあって、多少は他の女子よりも可愛がってた。
でもここまで自分が重症化するとは思ってもみなかったわけで。
あの日、夢野と洗い物をしてから余計にアイツの存在が俺の中で大きくなった気がするのだ。
それはアイツをただの後輩として見ていない自分に気付かされたというか。
「……はぁ、激ダサだぜ……」
次に会う時はどんな顔をして会えばいいんだろうか。
そんなことを悩みながら、ガンッと強く額を自室の壁に打ちつけた。
……俺らしくないだろ!
もうあーだこーだ悩むの辞めだ。
今まで通りでいいに決まっている。
それが一番、俺にとってもアイツにとってもいい事のはずだ。
……きっと、そのはず
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