《eleven:ふらふら女の人を追いかけていたと思ったら、いきなり合宿。はぁ、本当に……嫌だ》
《パンダ:そんなに合宿が嫌なの?》
《eleven:……あの人たちを間近で見たらパンダにも俺の気持ちが分かる》
画面向こうにいるパンダはそこで一旦沈黙した。
俺はそっと溜め息を吐く。同時に、バラエティー番組を見ていた姉の笑い声が響いた。
パソコンはリビングにあるため、ソファーの上でゴロゴロしている姉の姿をすぐに確認できる。
もう少しシャンとできないんだろうか。あれで彼氏に不自由しないとか、絶対嘘だ。否、姉の猫かぶりに騙されているだけなのか。
《パンダ:うーん、よくわかんないけど。他校の人たちが嫌ってこと?》
《eleven:あぁ、そうだな。特に合宿所を用意したところの学校の部長なんて俺様過ぎるし。っていうか、キャラ濃いんだよ……ホント》
《パンダ:え、……どうしよう。東京でテニス部の俺様部長に嫌な予感がしまくっているんだけど》
《eleven:は?何だよ、それ──ってすまねぇ、姉がパソコン使うっていってるから、俺落ちるわ》
パンダが気になる発言をしていたが、姉が煩かったので、すぐにチャットから退室した。
画面のページを閉じて姉に席を譲れば、ニヤリと笑われる。
「ははーん、十次、エロ動画でも見て──」
「違う」
否定したら姉は唇を尖らせていた。
……はぁ、憂鬱だ。
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