病院から出て行く彼女の後ろ姿を、見えなくなるまでずっと見つめていた。
それから、再び長椅子に腰を落とす。
せっかく彼女が教えてくれたんだけど、お世話になった先生とは既に会話を終えていた。
もうとっくに神奈川の病院に戻っていてもよかったのだ。
だけど、戻らなくて良かった。
否、真田たちに感謝、かな?
「幸村、待たせたな」
「すまない。予想よりも時間がかかってしまったな」
その後すぐに、俺の元にやってきた二人組に目を細める。
真田も蓮二も俺の体調を心配しているのか、俺の様子を気にしていた。
「……問題ないよ。今日は朝から調子がいいしね。それに」
「……それに?」
蓮二が急に興味津々に俺の顔を見つめてくる。といっても、瞼は相変わらず閉じているけれど。
「……フフ、内緒」
クスッと口元に笑みを作った。
きっと、意地が悪そうな笑みになったのだろう。
真田はあからさまに目を逸らしたし。咳払いがわざとらしいなぁ。
蓮二はノートを開いてペンを走らせているけど、答えにたどり着くはずはない。
もしたどり着くことがあったとしても、もう少し先だろう。
そして、その時は俺が彼女を捕らえる範囲にまで迫っているときだ。
「……さてと、戻ろうか。……あぁ、連休の合宿よろしく頼むよ?合宿とはいえ」
「任せろ。無様な真似はせん!」
「……ならいいけど」
真田の返事を聞きながら、そっと肩をすくめる。
東京なら──
君の音色を追える。
そして絶対にまた見つけるから。
31/34