裕次郎<はいさい、これでいいのか?
凛<オッケー!合うとーよ!
パンダ詩織<め、めんそーれ!!
わったーの中では1番遅くではあったが、遂にスマホを手に入れた。
早速ではあるが段取り通り、凛にメッセージアプリのグループの中に招待してもらう。
すぐに反応のあった夢野に口元が緩みかけた。
永四郎<……ここに彼女を招待している理由を言いなさいよ。
不知火<まぁまぁ、気にしなくても。
パンダ詩織<そうそう気にしなくても。木手さん、ハゲますよ?
わんの為に凛が夢野を招待してくれたんだが、裏で個人的にその説明に入る前に夢野が永四郎に喧嘩を吹っ掛けていた。
永四郎<あなた、今度会ったら覚えときなさいよ?
ゴーヤでも食わせるつもりなんだろうか。
永四郎のイライラしたような表情を想像しながら、誰もいない自室で咳き込んだ。
知念寛<……にーぶい
田仁志<わんはやーさい……
眠いとか腹が減ったとか、他のメンバーが自由に呟き始めた時には、凛から個別メッセージで、個人的に夢野に連絡したらどうかと来た。
そう言えば、新垣がテレビ通話みたいなのをしたとか言っていたっけと思いつつ、そこまでの勇気は持てない。
とりあえず、と。
夢野に個人的にメッセージを送る。
裕次郎<個別はこう?
わん自身、わざとらしいなとは思いつつも、アプリ初心者を装ってだ。
いや、初心者で間違いでは無いんだが。
パンダ詩織<そうですよー!
裕次郎<にふぇーどー!わんが使い方慣れるまで、相手して欲しいさぁ。
パンダ詩織<いいですよー!しむん!!
一生懸命うちなーぐちを調べてくれているのか、夢野は楽しそうに返事をくれた。
よし、ここまでは頭の中の段取り通りだ。
裕次郎<ところでやーは、がんじゅーい?
パンダ詩織<が、がんじゅーい??
裕次郎<元気かぁ?
パンダ詩織<あー!元気ですよ!超元気!!
ポロンっと、ハイテンションな動きをするパンダのスタンプが送られてきた。
ふっと自然に口元が緩む。
裕次郎<それは良かったさぁー。ヴァイオリン、ちばりよー!
パンダ詩織<わぁありがとうございますっ!えっと、にふぇーでーびる!!
裕次郎<だからよー、わんとやーはどぅしさぁ。
パンダ詩織<どぅし……?あ!
またポロンとすぐに友達!と文字入りのパンダが握手しあっているスタンプが送られてきた。
その頃にはわんはもう1人で笑っている。
なかなかに気持ち悪いかもしれない。
この後も暫く夢野とのメッセージのやり取りはなかなか充実したものになった。
距離的に離れているのには変わらないはずなのに、メッセージのやりとりをしている間は、身近に夢野の存在を感じる。
あの無人島で過ごした日々が、そっとわんの中に思い出された。
「……元気そうでよかったさー」
呟いたセリフは、誰もいない自室の中でそっと闇に溶け込んでいく。
薄暗さに目を細めて、やっと部屋の明かりを付けた。
いつの間にか夕方だった。
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