タコパなう
「は……?」

侑士からメールが来たと思ったら、また画像が添付されていて、開いたらこれまた夢野さんが映っとった。
これで何回目、いや何枚目やろうか。
やつと夢野さんのツーショット写真を送ってこられるのは。

「あ、ツーショットちゃうわ……って、なんで仁王くんやねーん!」

盛大に独りで大声だしてつっこんでまう。
いやいやいや、悪いんは侑士や。と首を高速で横に振っていたら、また着信音が鳴った。
画面通知はやはり侑士。
そしてまた画像つきメールである。

「……タコパしとるって、氷帝ほんま羨ましいっちゅー話やで?!うおぉ、ほんまなんやねん、お前ら!そして仁王くんの違和感半端ないで?!え?どないしたん?!」

自室で一人携帯電話につっこんでいる姿は間違いなく滑稽やねんやろう。
ちらりと弟が扉の隙間から俺を見ていたが、俺と目があった瞬間に黙って扉を閉じて行った。
いやいやいや、あのな、関西人ならなんかツッコミいれていけや?!な?!

『……どや?』

「どや?ちゃうわ!!アホっ」

鳴り響いた着信に通話ボタンを押して耳に押し当てたら、侑士が勝ち誇ったかのような声を出してくる。

「はっ、もしかせんでも、夢野さん、そこにおるん?」

『おるよ。代わったろか?……謙也』

ええ?!いきなり過ぎひん?!
心臓が口から飛び出しそうになりながら、深呼吸をする。それから夢野さんにカッコ悪いのはあかんと思って精一杯いい声を出そうとした。

「……んん、夢野さん、俺やけど」

『…………いえ日吉です。忍足さんの従兄弟なんて大変ですね』

「……日吉くん、侑士たこ焼きに包んで焼いて生ゴミに捨ててきてもろうてええで?」

わざわざ咳払いして声を作ったのもばれているらしく、後ろの方で侑士の笑い声が聞こえたので殺意が芽生えた。ほんまにアイツ今度会ったらしばく。

『おい、夢野』

侑士への復讐に燃えていたら、電話向こうで日吉くんが夢野さんの名前を呼んでいた。

『……もしもし、謙也さんですか?』

「ぶあっ?!」

『?!謙也さん、火傷しましたか?!』

いや俺はたこ焼きパーティなんかしてないから、鉄板あらへんし火傷なんてしてへんで。
むしろ侑士の悪戯のせいで、心が大火傷負ってしまったんやけどな?

「お、俺は大丈夫やけど。夢野さんはいきなりその人数が家来て大丈夫なん?侑士、迷惑かけとるんやない?」
『あはは、最初はびっくりしましたけど、大丈夫ですよ。夕食が賑やかなのは、最近少し嬉しいんです。……戸惑うことも多いですが』

夢野さんの台詞にじわりと彼女の事故のことを思い出した。
いつも明るく笑うから、ふと忘れそうになるけど、この子は家に帰っても一人なんやと息を吐き出す。

「……寂しい時電話してくれたら、いつでも笑かしたるで?」
『……ふふ、本当ですか。あ、じゃあ忍足先輩に謙也さんの電話番号とか聞いていいですか?』
「も、もちろんやで?!」
『ありがとうございます!私の番号とかも忍足先輩に送ってもらいますね!』

これは社交辞令みたいなもんやろうか。
それでも、連絡先をやっと交換できるんかと妙に口許が緩んだ。
問題は侑士やけども、夢野さんの手前、しょーもない嘘はつかんやろうと思う。

『あ、じゃあ忍足先輩に代わりますね』
「ん、また、やで」
『はい、また!』

同時に賑やかそうな笑い声が聞こえてきて、夢野さんの声がそこに混じるのがわかった。

あぁ、ほんまにどうしようもなく空しくなるわ。

『……謙也、泣いとるやろ?』
「泣いとるわけないやろ、アホ!」

泣きたくなるぐらい彼女の顔が見たいだけや。

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