音色が残る夜sideK.A
「はー、緊張したさー……」

スマホの通話アプリの通話終了にふーっと息を吐き出した。
財前たちからメールがあって、金田のタブレットPCとでテレビ通話して、しかもカメラ画面でである。ただでさえあまり会話したことないのに、なぜそこにわんが誘われたのかわからなかった。
たしかに例のサバイバル合宿では一緒だったが、基本的にわんの比嘉中は他校とはあまりかかわってない。
わんが関わっていたとしたら、ほんのすこしだけ夢野さんとである。

「まー、それで呼ばれたんだろうけど」

そのせいですごく緊張した。
本当に他の二年生とのテンションの差をかなり感じたさー……。

それでも通話を終わらせなかったのは、夢野さんが楽しそうに笑っていたからかもしれない。
先輩たちには甘いって明日怒られそうだけど。

「……ヴァイオリン、すごかったさー」

例の合宿が始まる船の上で弾いていたときは全く興味なくて夢野さんの姿を見ず、耳にはいる音楽もうまいとは思いつつ気にしてなかったし、合宿中に何回か弾いているのは聴こえていたけど、だけどこうまともに弾いているときを見たのも聞いたのも初めてだった。

飼っているウサギたちもすごく心地良さそうに奏でられる曲を聞いていた。
そして同じ人物だとは到底思えないくらい、彼女はイメージが変わるんだなと思う。
普段の放って置けない危なっかしい感じから一転して、芯の強い凛としたヴァイオリニストになっていた。

「確かにすごくて、耳に残る……でも……」

何故か普段の夢野さんの笑顔の方が安心するというか。

「……それはただの好みか……あははー」

先輩たちには絶対言えないなぁと頭をかく。

クラシックはよく知らないけど、今度全国大会で東京に行くときはCDショップを巡って曲を探してみようかなとぼんやりと考えた。

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