思うところはあっても
「ふーん、そういうことか……。つかなんだよ、みんな俺の知らないところで詩織に会って遊んでるんだ……うわぁ、腹が立つなぁ……切原ムカつく」

「隣でぼやくなよ!!」

財前の説明に正直な今の気持ちを吐いたら、隣の席に座っていた切原が嘆いていた。だけど知らない。切原が詩織とプールに言ったのは間違いないんだから、ムカつくのはムカつく。

「それよりさ、二年全員集まれそうなのか?」

ファミレスのメニューを見ながら室町が苦笑した。
その隣で財前が「さすがに比嘉の新垣は無理やったわ」と笑う。

「せやけど、まぁタブレットで通話してくれるらしいからええわ」

「喜多はいけるって。あと、六角の天根とルドルフの不二と金田も大丈夫らしい」

「おー、室町、仕事早いじゃん!」

そう嬉しそうに笑った切原に「で?」と尋ねたら「え?」と返された。

「だから切原は?って。連絡したんだろ?青学の二人にさぁ。ちなみに不動峰は全員オッケーだから……神尾がなんか言ってたけど、どうせアイツも来るだろうし。……理由聞かれたけど、返信してないんだよな。まぁいいよね……」

「い、今から送る!!」

やっぱり送信するの忘れてたのかとため息をついたら、財前が慌ててスマホを取り出した切原にストップをかけた。

「俺が送るわ。……氷帝の鳳と日吉からは返信あったで。まぁ参加やな。樺地は……跡部さんに連絡取らなあかんみたいやわ。面倒くさ……しゃあないから、あの人には全部話すか」

それから暫く携帯電話を弄り始める。その間に適当に注文して昼食を食べることにした。
ちょうど財前の注文したドリアが届いたところで、財前の携帯電話が鳴って、どうやら跡部さんかららしい。
俺らに説明したように、丁寧に電話向こうの跡部さんに詩織のことを話していた。

『わかった。樺地は貸してやるよ。で、その計画だと、さっきの時間には自宅だな?』

そんな声が漏れて聞こえて、相変わらず上から目線で偉そうな人だなとコーラを飲む。

……財前の話だと、詩織が動揺しているらしいし、もしかしたら動揺させた相手が二年生の可能性もあるって話だった。
少なくともテニス部関係者で。
間違いなく男で。
財前が感じた限り、それは男女間の動揺らしい。

「……一番怪しいのはアイツなんだけどなぁ……」

日吉だ。
なんとなくそんな気がした。
まぁ二年の中だとしたら、だけど。

一年を入れれば、個人的にも気にくわない越前のやつの可能性もある。その節はあったし。

三年生を含めたら、もっと可能性がある人は増えた。筆頭はさっきの跡部さんだ。だけど、電話の様子から跡部さんも初耳みたいだったし、何よりあの無人島の合宿以来詩織には会ってないらしい。

「お、青学も二人とも問題ないって」

「これで全員じゃん!」

財前の台詞に頷いた切原の横顔を見つめながら「……プールで何かした訳じゃないよね?で、バカだから気づいてないとかありえそうで怖いんだよなぁ……」って思わずぼやいていて、そしたら「俺より不二裕太の方が怪しいから!!」と涙目で訴えられた。
それから逆にプールで進展はなく、むしろ何もなかったんだと嘆かれる。面倒くさくなったので、そんな切原を無視した。

「まぁ二年やったら今日このあと会った瞬間にわかるやろうし……、三年も入れたら、切原んとこの先輩らジャッカルさん以外怪しくなるしな」

「……た、確かに最近の先輩ら……夢野に対して色々おかしかったけど……でも、昨日はずっと部活で一緒だったから、夢野に会いにいける時間なんてなかったぜ?」

「……そうなると、やっぱり……氷帝が一番怪しいんじゃ」

室町がはぁっと深いため息を吐き出す。
自然に考えれば確かに詩織と同じ学校の方が会いやすいだろう。

「……まぁ、俺らの目的としては……詩織の動揺をなくすことかな」

何があって誰かを意識し始めたのかわからないが、その意識を完全に消させる。
それが俺らの目的だ。

「せや。わざわざ二年全員集合なんもそのためやし。犯人が二年やったとしてもそうじゃなくても忘れさせたる」

それが距離の離れた財前にとって最善策なんだろう。
俺にとってもその方がいい。
ただ、できれば俺に意識してくれたらよかったのにと思った。

俺以外の誰かに惹かれるぐらいなら、それを忘れさせるぐらいに邪魔して。
俺に惹かれて欲しいと願う。

そんなことをそれぞれが思ってるんだとしたら、俺たちはきっと抜け出せない迷宮に落ちたみたいだな。なんて考えた。

「んじゃ詩織に連絡するわ」

そう言った財前の声を聞きながら口にしたポテトの味がしなくて眉間にシワを寄せる。
……詩織の声が俺の名前を呼ぶのを早く聞きたくて堪らなかった。

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