それは嫉妬という感情
「……あかん、もう限界やねんけど」

フードコートの白いテーブルの上に突っ伏する。
ガンっとすごい勢いで頭を打ったが知るかい。額より心が痛すぎるんや。ほんまもう耐えられへん。

「右に同じじゃ」

左でガンっと俺より痛そうな音が聞こえたから、顔を向けたら仁王やった。

「……俺、もう帰りたい」
「俺もッス……」
「ま、丸井くん!逃げちゃダメだCー!……やっぱ、俺、邪魔してくるっ!!詩織ちゃんに嫌われてももう見てらんなEーっ」

青い顔で沈んでる丸井と切原と眠気が綺麗になくなってるのかいつもよりはきはき喋るジロー。そしてそれを慰める桑原と止める滝に、ジローに賛同している岳人。
あかんわ、こっちもなかなかカオスやわ。

柳生もどこか落ち込んでいるようやし、さっきからずっと黙りこんだままの幸村と柳も怖い。特に幸村が詩織ちゃんに固執してるのは、合宿ん時からわかっとることやし、今日の不二兄弟の行動とか黙ってみとる方が気味が悪いくらいや。
それから宍戸と鳳の後ろにいる日吉をちらっと見たら、いつも以上に落ち着き払っていて三度見ぐらいしてもうた。
どないしたん。いつもめっさ舌打ちするやん。なんで今日はそない冷静装ってるんや。

「……っ?!」

それから視線を再び詩織ちゃんたちに向けたら、不二弟が詩織ちゃんにあーんしとった。いや、声は聞こえへんからあーん言うとらんかもしれへんけど。
でも、行動はそれやった。つか、なんで不二兄弟は詩織ちゃんを挟んで座っとるん?流夏ちゃんいう子はどないしたん。もっと男を近づけさせへんオーラの子やったやん。

バキッって何かが折れた音がしたから振り向いたら、日吉が食べてたかき氷のスプーンを折ったのと、幸村が呑んでた炭酸ジュースのプラスチックのコップを握り潰した音やった。あかん、全然冷静ちゃうわ。表面だけかい。何かっこつけてんねん。

「いやもう無理やわ。みんな、悪いな。すんまへん」

滝からジローを預かって一緒に詩織ちゃんのところに歩いていく。
それから、さっきの不二弟のあーんのお返しなんか、詩織ちゃんが不二弟にあーんしとったから、不二弟の口にはいる前に食べてやった。
ちなみにジローは詩織ちゃんの背中に抱きつく。

「ふぁ?!」

「んー、このたこ焼きはなっとらんな。俺が作った方がうまいで」
「詩織ちゃんーっ、ずるいCーっ!俺のこと断ったのにーっ!!」

「な、ななな、なんで忍足先輩とジロー先輩がここに!」

「ふふ、我慢してた方じゃないかな。……夢野さん、忍足や芥川たちはずっと僕たちのこと見てたみたいだよ?」

「は?!兄貴っ?!」

やっぱ不二兄はわかっとったんかい。せやから、あんな額に口づけしたりしとったんやなと少しだけ俺のポーカーフェイスが崩れそうになる。
不二弟の方はなにも知らなかったらしい。まぁこっちはこっちで天然な行動が厄介すぎるんやけどな。

「……夢野さん」

俺らの行動で動けるようになったのか、幸村たちがぞろぞろとやってきた。

「クソクソ、詩織の馬鹿っ!!」
「ご、ごめんね。夢野さん!」

岳人が跳ねて文句を言えば、鳳が苦笑しながら頭を軽く下げる。

「きゃー!詩織ちゃん、ありがとう!!」
「え、なんでタマちゃんは私にお礼を言ったの?!てかどうして皆さんこんなところに?!えっ?!」

わけがわからないっと言った表情でキョロキョロしている詩織ちゃんは全員を見回してから、やっと流夏ちゃんいう子を見て「ホワッツ?!」と叫んだ。




「……自分らにお礼言っとくわ。おかげで己の気持ちがわかったさかい」

叫びながらまた独り言を色々呟いている詩織ちゃんを横目に、不二兄弟へ礼をのべる。

はっきりとわかったんや。
これは小動物のペットを取られたとかそないな気持ちやない。
気に入ってるとか、そんな軽い言葉で終わることやのうて。

そうやこれは恋なんやろう。

「詩織ちゃん、俺、本気で詩織ちゃんが好きやわ」
「忍足先輩、私は本気で忍足先輩が恐いです。私の全財産奪わないでください」
「イヤや。なんで俺にだけそないな態度なん」
「忍足先輩は特別だからです」
「……え」
「特別警戒体制なんで」
「……せめて警報器の数、あと数個外してくれへん?」

前途多難で、受難続くのは確定で。
もうほんま後戻りできひん。
でも好いてもうたんやから、しゃーないやろ。

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